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StoryWriter

4月が訪れ、新生活が始まる季節となりました。

学生時代は新学年を迎えるごとにきっかけが自動的に与えられ新たな生活の始まりを感じていましたが、社会に出ると自らの大きな選択がないかぎり生活のリセットやリスタートというタイミングはかなり減り、大人の責任感というものを感じます。

4月をタイミングに新しく始めたいことや目標などを掲げがちですが、時期を見計らってやり始めた事はその後の継続に繋がっていかないような気がしてしまいます。

始めたいと思ったことを思い立ったタイミングでスマートにスタート地点に立って出発できるような人間になりたいものです。

そんな目標とも言えぬ秘かなこころざしを4月に抱きはじめて何年が経つのでしょうか。

Vol.146『TITANE/チタン』

☆4.1/☆5.0点中

https://gaga.ne.jp/titane/

 

幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。
彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──

 

『RAW〜少女のめざめ〜』で鮮烈なデビューを飾ったフランスのジュリア・デュクルノー監督の長編第2作。頭にチタンを埋め込まれた主人公がたどる数奇な運命を描き、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた衝撃作。
世界各国94ノミネート22受賞と、現在映画祭・映画賞を席巻中の話題作であり、パルムドール史上最も奇天烈とも評価され、新時代の到来を告げる圧倒的怪作です。

幼い頃の交通事故で頭にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。大人になり、車に対して異常な執着を持ちながらダンサーとして働いていますが、彼女は殺人衝動を持っていて出会った人間を次々と殺していく。

男も女も魅了するアレクシアが執着するのは人ではなく車であり、あろうことか車とセックスして妊娠します。なんてもの観てしまっているんだろうと戸惑いながらも刺激的な内容に目が離せなくなってしまいます。

アレクシアと車の激しいセックスシーンと照明の点滅、燃え上がる炎、身体から流れ出るオイル、金属、裸体、我々の困惑した心情を捉えるかのように移り変わる映像のカラーリングは、瞼を閉じても脳裏にこびりついて離れず、視覚的情報の多さに惑わされる。

本作はアガト・ルセルとヴァンサン・ランドンのW主演となっており、ヴァンサン演じる消防士は10年前に息子が行方不明となり、喪失感を抱えひとり寂しく生きてきた。アレクシアはその行方不明になった男性に変装し、ヴァンサンの息子と偽って彼と新たな生活を始め、罪を犯し、行き場をなくしたアレクシアを消防士が盲目的に包みこむ。

誰にも愛されず、誰も愛せなかった主人公と、愛する者を失い、愛の対象を渇望していた男の間で生まれる愛。2人の愛は一見理解し難いものだが、どうしようもない固い糸で結ばれてしまいます。

また2人はそれぞれに変化への恐怖も同じく抱えており、アレクシアは身体にサラシを巻き、髪を切ってヴァンサンの息子になりすまそうとするが日を増すごとに大きくなってくるお腹への怯え。ヴァンサンは毎日バスルームでお尻にステロイドを打ち続け、その筋肉質な身体を保とうとする老いに対する怯え。

一見規格外にみえる内容の物語ながらも奥に息を潜んでいるのは、狂気へと変わってしまった愛に対する渇望や自らの変容に対する恐怖など、彼らの抱える感情も普遍的で共感性のあるものであり、色々な葛藤を抱えて生きていく人間そのものを表しています。

『TITANE/チタン』が映し出す狂気的で幻想的な映像が教えてくれるのは、愛されるよりも愛することの喜びであり、その究極の愛を目撃してしまっては、誰かを愛したいという破裂しそうなくらい衝動的な欲望を感じずにはいられません。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノンの10人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。 2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、 2020年3月よりGO TO THE BEDSとPARADISESの2グループに分裂し活動開始。精力的にライブを実施し、2021年には両グループ合わせて270本ものライブを敢行。 2022年1月1日、満を持して再結成を果たす。 多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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