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テラシマユウカの映画コラム Vol.147『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』

StoryWriter

いつから映画をこんなに好きになったんだろう?と、ふと考えることがありますが、ルーツを辿ってみると『ハリーポッター』に行き着くのかもしれません。

ここまで世界観を愛し、キャラクターを愛し、少しの情報解禁があるだけで心踊り、家族全員で熱量を共有できた唯一無二の存在が『ハリーポッター』でした。

そんな魅力的な魔法ワールドと同じ時代を生き、『ファンタスティック・ビースト』というまた新たなる夢の物語の幕開けまでリアルタイムで追い続けていられる幸せを噛み締めてしまいます。

ファンタビの試写会に招待して頂いてレビューまで書かせてもらえることは、子どもの頃に木の棒を振り回して魔法ごっこしていた私には想像もつかなかったことでしょう。この時代に生きている喜びを感じながら、この先の未来で魔法の世界とまた少しでもお仕事させてもらえるように頑張りたいというのが秘かな夢だったりします。

Vol.147『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』

☆4.2/☆5.0点中

https://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/index.html

 

魔法動物を愛するシャイでおっちょこちょいな魔法使いニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)が、ダンブルドア先生(ジュード・ロウ)や魔法使いの仲間たち、そしてなんと人間(マグル)と、寄せ集めのデコボコチームを結成。魔法界と人間界の支配を企む黒い魔法使い、グリンデルバルド(マッツ・ミケルセン)に5つの魔法と魔法のトランクで立ち向かう。そして明かされる、ダンブルドアとその一族に隠された誰も知らない秘密とは?

 

『ハリー・ポッター』より以前の物語を描いた『ファンタスティック・ビースト』シリーズの3作目となる今作。監督を務めているのは、『不死鳥の騎士団』からシリーズに関わってきた、デヴィッド・イェーツ。脚本は原作者のJ.K.ローリングはもちろんのこと、今作からはハリポタシリーズの脚本家スティーヴ・クローヴスもクレジットされています。

そして、ファンとしては前作の最後の最後までたっぷりと謎をつめこみ伏線が張られっぱなしで堪らなく焦らされている状態ですが、今作のタイトルにもあるように謎を明かしてくれるであろうと我々が期待に胸を膨らませるのは、
・クリーデンスの本名がアウレリウス・ダンブルドア
・ダンブルドアとグリンデルバルドが”血の誓い”を結んでいた
というふたつの点。

その他にもハリーポッターシリーズから観ている身としては気になる箇所もまだまだ多く存在しますが、今回の物語でポイントとなっていくのは主にこの2つの謎となっていきます。

注目すべきは、前作までグリンデルバルドを演じていたジョニー・デップが降板しその代役として起用されたマッツ・ミケルセン。

本作の時代は1930年代、マグルの世界でいうと第二次世界大戦直前。ドイツではヒトラーが誕生しナチスが独裁政権となり、世界恐慌により苦しめられた時代でもあります。

一方、魔法界では魔法使い連盟のトップを決める選挙中のドイツ魔法省でグリンデルバルドが候補者として名前が挙がり、クライマックスに続くこれからの不穏な時代の幕開けを予感させていきます。

純血主義であるという点に関してはヴォルデモートと共通しますが、より信念強く、人々に恐怖を抱かせるよりも言葉で心を巧みに操り支配していくのがグリンデルバルドという人物像であり、悪だと頭ではわかっているけれども不思議と惹きつけられてしまう高貴な魅力は、マッツ・ミケルセンが演じたことにより説得力が増したように感じます。

喫茶店にダンブルドアがグリンデルバルドを呼び出すお茶会から物語は始まりますが、そこでのグリンデルバルドの言葉と、最後にダンブルドアに向けて吐き捨てる彼の言葉はたまらなく、この最初と最後にグリンデルバルドの言葉を聞かせる構成のために今作が存在するのではないかと言っても過言ではありません。

ダンブルドアが同性愛者であることは以前から作者本人が語っていますが、二人の関係性が単なる友好的なものではなく、様々な感情を乗り越えた先の因縁に近いものであることは、マグルを滅ぼしたいほど嫌いなはずなのにダンブルドアにマグルの喫茶店に呼び出されたら来てしまうグリンデルバルドの行動に表れています。昔は愛し合ったふたりですが、ダンブルドアは未練を断ち切り前へ進もうとしているものの、グリンデルバルドはダンブルドアへの気持ちを捨てられず悲哀に満ち、戦うしかない道を歩んでいってしまう。そんな後悔の念と切なさを感じ、最後に放った言葉の真意を想うと胸が苦しくなってしまいます。

今回はグリンデルバルドに焦点をあててここまで書いてきましたが、作品全体の感想としては、ファンタビシリーズ全5部作のクライマックスに向けて駒を進める物語というよりも、新たな大事件は起きないものの1、2作目で我々が気になっていた点を盛大に解き明かしてくれた説明的な物語となっています。

また、ハリポタ・ファンタビシリーズのファンに向けた作品であり、ここまでお金と時間をかけて盛大にファンムービーを成立させてしまうJ.K.ローリングが始めた魔法ワールドの規模の凄みを知る一作でもあります。

今回は最終的にはなんだか少し影の薄くなってしまったニュートと、ティナの恋の行く末やクリーデンスの今後、そしてヴォルデモートに出会う前のナギニのまだ解き明かされていない謎など、まだまだ展開されていきそうな話題が渋滞している為、ファンタビ4、5と続編を期待せずにはいられません。

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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノンの10人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。 2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、 2020年3月よりGO TO THE BEDSとPARADISESの2グループに分裂し活動開始。精力的にライブを実施し、2021年には両グループ合わせて270本ものライブを敢行。 2022年1月1日、満を持して再結成を果たす。 多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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