先日、仕事の関係で父が大阪から東京に数日間来ていたので2人でご飯に行ってきました。
なかなか実家に帰れていないので会うのは約1年ぶりだったのですが、色々近況報告なんかもしながら将来の話になり、少子高齢化社会での老後についての話までに発展して、コラムで取り上げようと考えていた『PLAN75』の話も偶然出たのでタイミング良いなと思いつつ公開されてすぐに観てきました。
Vol.158『PLAN75』
☆3.8/☆5.0点中
https://happinet-phantom.com/plan75/
夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチ(倍賞千恵子)は78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリアは幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に勤しむ日々を送る。
果たして、<プラン75>に翻弄される人々が最後に見出した答えとは―――。
監督を務めたのは、本作が初長編作となる早川千絵監督。第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、初長編作品に与えられるカメラドールのスペシャルメンションを受賞しました。
物語の中心となる夫と死別し一人慎ましく生きる78歳の角谷ミチを倍賞千恵子が演じ、少子高齢化が一層進んだ近未来の日本で生きること、プラン75に対する当事者の葛藤の多くを語るのではなく繊細な視線や手の仕草で哀しみを表現し、重厚な演技で魅せます。また、プラン75申請窓口で働くヒロムを磯村勇斗、その日が来るまでサポートするコールセンタースタッフの瑶子に河合優実らが顔をそろえます。
少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から自らの生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行される。超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなりますが、当事者である高齢者や若い世代はこの制度をどう受けとめるのか?
人は何を選択し、どう生きていくのか?
この架空の制度を媒介に、少子高齢化・生死の選択とセンセーショナルな題材に切り込み、「生きる」という究極のテーマを全世代に問いかけます。
ミチを通して、高齢化社会はもちろんのこと、外国人労働者や非正規雇用、障がい者施設の殺傷事件など様々な現代における社会問題が浮き彫りになり、生きる価値を問われるような社会の在り方や不寛容さが増幅する現代に対する危機感を刺激され、フィクションとは分かっていながらも実際にこんな世の中になり得るのではないかと怖くなってしまいます。
本人の意思での選択であり強制ではないといいつつも、ジワジワと追い込まれ死んだ方がいいかもと思わせる。
作中のふとした一言から見てとれるようにプラン75が施行された社会において長生きすることが歓迎されることではないことの恐ろしさや、78歳のミチや同僚らがホテルの清掃員として働くのは自分が社会に必要であり無価値な存在ではないとアピールするためでもあるという生きにくさに、人は誰しもが等しく歳を取り、どんな人間であっても不要になることはなく、こんなことを当たり前だと分かりきっているはずなのに恐ろしい社会の風潮が存在してしまうことを忘れてはいけない、ただのフィクションの物語ではないと、目を背けてはいけないことを考えさせられます。
誰もが、死を迎える時に生きていてよかったと思える社会であってほしい。
死を通して生きることを見つめる作品です。
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