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StoryWriter

Netflixで配信中の台湾ホラー映画『呪詛』が最近話題となっています。

流行りにのって気軽な気持ちで食事中に再生ボタンを押してしまったのですが、すぐにこれは今観るものではないなと察してそっと画面を閉じ、呪詛を観るに相応しい時間まで寝かせているところです。

冒頭30秒でどうやらこれはそこらのホラーとは様子が違う作品だぞ……と惹き込まれる始まりであり、気分最悪になってしまう作品に特にマッチする深夜を超えた明け方に観られる日はまだかと期待に胸が膨らみます。

話題になっているからこそ普段ホラーを観ない層の人たちがこの作品に手を出してしまう恐怖も感じながら、呪詛の被害者となってしまった人の感想を聞くのが楽しみでもあります。

Vol.161『X エックス』

☆3.9/☆5.0点中

https://happinet-phantom.com/X/

 

1979年、テキサス。女優のマキシーンとそのマネージャーで敏腕プロデューサーのウェイン、ブロンド女優のボビー・リンとベトナム帰還兵で俳優のジャクソン、そして自主映画監督の学生RJと、その彼女で録音担当の学生ロレインの3組のカップルは、映画撮影のために借りた田舎の農場へ向かう。彼らが撮影する映画のタイトルは「農場の娘たち」。この映画でドル箱を狙う――。6人の野心はむきだしだ。
そんな彼らを農場で待ち受けたのは、みすぼらしい老人のハワードだった。彼らを宿泊場所として提供した納屋へ案内する。一方、マキシーンは、母屋の窓ガラスからこちらを見つめるハワードの妻である老婆パールと目があってしまう……。
そう、3組のカップルが踏み入れたのは、史上最高齢の殺人夫婦が棲む家だった――

 

A24が手掛ける究極のエクストリームライドホラー。

トビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』など、70年代のホラーへのオマージュも捧げられており、物語の展開も若者グループが田舎にノコノコとやってきたかと思えばとてつもない恐怖に襲われる……といったお約束をなぞりながらもスラッシャー映画への愛とリスペクトを感じ、ただのリバイバルで終わらせない、ど直球でありながらもたまに投げつけられる変化球がおもしろい、新たな要素とジャンルへの皮肉が盛り込まれたある種ヲタク的な作品となっています。

監督を務めるのは『キャビン・フィーバー2』『サクラメント 死の楽園』などを手掛けてきたタイ・ウェスト。
『マローボーン家の掟』や『サスペリア』など何かとホラー映画に縁があるミア・ゴスを主演に迎え、また、『スクリーム』やアダムス・ファミリーのスピンオフドラマ『ウェンズデー』での主演も控えるジェナ・オルテガも出演しています。

『X』、この謎めいたタイトルの意味とは?
秘密のX、極限のXTREME、快感のXTC、未知なるXFACTOR……『X』に込められた様々な要素が次第に明かされ観客へと一気に押し寄せてくる。若者グループが田舎にやってきたワケがポルノ映画の撮影であるというのがこの作品の肝であり、性と生と聖が激しく混ざり合う過激な恐怖が我々を待ち受けています。

『ドント・ブリーズ』では老人が若者に襲い掛かるという老人を恐怖の対象としたホラーであり、今作も同様の系譜と言える老夫婦の殺人鬼ではありますが、ドント・ブリーズと大きく違う点はその老夫婦の殺人の動機といえます。

かつて美しい踊り子であった老婆は結婚するも二度の大戦により思い描いていた人生を送ることができず、今でも自分は綺麗で特別であるという願いから自分の老いを受け入れることができず、呪いのように若い女性を目の敵にし、若者を殺していきます。

ポルノ撮影にきた若者たちと性的な関係への強い願望がある老夫婦、若者vs老人のポルノのぶつかりあいの構図に良くも悪くもともかく凄まじい展開へと陥っていく。

今作の舞台は1970年、まさに70年代のスラッシャー映画を想起させるような設定であり、アメリカのポルノ映画の全盛期でもあり、また、主人公ミアが着るファッションや小物などからも70年代のレトロでキュートなモチーフが印象に残り、あらゆる方面から70’sを楽しめるものともなっています。

また、『X エックス』はなんとA24初のシリーズ作品として3部作の制作を予定されており、この訳の分からないアトラクションのような楽しさがまだまだ続いていきそうで、今後も注目していきたい作品です。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。 2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、 2020年3月よりGO TO THE BEDSとPARADISESの2グループに分裂し活動開始。精力的にライブを実施し、2021年には両グループ合わせて270本ものライブを敢行。 2022年1月1日、満を持して再結成を果たす。 多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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