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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

7・8月は待ちに待った怒涛の新作ホラー公開月間だったのですが、今週はその中でも特に楽しみにしていた作品を観てきました。

最近は台湾やタイなどアジアホラーがアツい傾向にあり、救いも容赦もない描写をしてくれるアジアホラーに期待が高まります。

Vol.166『女神の継承』

☆3.9/☆5.0点中

https://synca.jp/megami/

 

タイ東北部の村で脈々と受け継がれてきた祈祷師一族。美しき後継者を襲う不可解な現象の数々…
小さな村で暮らす若く美しい女性ミンが、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返す。途方に暮れた母親は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。もしやミンは一族の新たな後継者として選ばれて憑依され、その影響でもがき苦しんでいるのではないかー。やがてニムはミンを救うために祈祷を行うが、彼女に取り憑いている何者かの正体は、ニムの想像をはるかに超えるほど強大な存在だった……。

 

世界から絶賛された衝撃のデビュー作『チェイサー』。そして、『哀しき獣』『哭声/コクソン』でその名を轟かせた韓国映画界が誇る気鋭ナ・ホンジン。世界中の映画ファンが新作を待ちわびる中、初めて海外の監督とタッグを組み、原案・プロデュースを手がけた待望の新作。

『哭声/コクソン』の続編として、ファン・ジョンミンが怪演した祈祷師・イルグァンの物語を思いついたことをきっかけに、その構想がタイの祈祷師をモチーフに本作へと受け継がれ、ナ・ホンジンがタイ出身のバンジョン・ピサンタナクーンを監督に抜擢し、『哭声/コクソン』のアナザー・バージョンとも言える衝撃作が完成しました。

観る前はPOV式であることは分かりませんでしたが、タイで祈祷師などのドキュメンタリーを撮影していたチームは、祈祷師の一人・ニムを単独で撮影することなり、ニムの取材を続けていく中で彼女が精霊バヤンの意志を継承し祈祷師となった経緯や、どんな事をしているのかなどの話を聞いていたところから物語は始まります。

巫女であるニムがインタビューを受けるところから始まり、姪であるミンが登場したあたりでは、村ぐるみでミンを女神の巫女の後継者にさせるためにあれやこれやとやっていくのだろう……と思うのですが、いざ物語が進行してみると予想と180°反したエクソシスト的な展開をパラノーマルアクティビティのようにみせていきます。

現代に生きる巫女という特殊な職業に密着するドキュメンタリーという形は、よりリアリティを感じさせ、序盤からゆっくりと不穏な空気を帯びていき、後半に定点カメラの映像がはいってから畳み掛けるような怒涛の恐怖のオンパレードは流石にやりすぎでは……というレベルであり、終盤から撮影スタッフが映るようになって、それめがけて襲ってくる恐ろしさは臨場感が感じられ、ぐるぐると回る視界とグチャグチャの画面にPOV視点が効果的な演出となっています。

どうにか救われないものかという我々の淡い期待をこれでもかと打ち砕く後半の儀式のシーンは絶望感に満ちていて、何もかもがどうしようもなくなってしまう最悪のラストを予感させます。

そしてただのバッドエンドでは終わらせてくれない、待ち受ける最後の最後のあの言葉による絶望に、なかなか席を立つことが出来なくなってしまうのです。

衝撃的な絶望により1度では掬い上げきれていない要素が多々あるので、考察の余地もかなりある興味深い作品です。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。 2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、 2020年3月よりGO TO THE BEDSとPARADISESの2グループに分裂し活動開始。精力的にライブを実施し、2021年には両グループ合わせて270本ものライブを敢行。 2022年1月1日、満を持して再結成を果たす。 多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

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