こんにちは、テラシマユウカです。
先週のコラムの冒頭でもお話ししていた『呪詛』をようやく観られるタイミングが訪れ、ついに再生ボタンを押してしまいました。
日常的にホラー映画を観ている中で、家の構造が日本と大きく異なりどこで何が来るかが予測できなかったり、非日常的な要素が多かったりという理由で洋画ホラーの方が好んで観ることが多かったのですが、真に怖いのはやはり生活様式が近しいアジアホラーの方ではないかと、今後の趣味嗜好に関わってきそうな一作でした。
今週はそんな『呪詛』について詳しく感想を書いていきたいと思います。
Vol.162『呪詛』
☆4.0/☆5.0点中
https://www.netflix.com/jp/title/81599888
リー・ルオナンは6年前にとある村落でタブーを犯してしまったと視聴者に告白。娘への呪いを解くために協力してほしいと画面に向かって呼びかける。
ルオナンは里子に出していた娘・ドゥオドゥオを里親のチーミンから引き取って一緒に暮らすことに。しかし、ドゥオドゥオの身辺で超常現象がいくどとなく巻き起こる。
ルオナンは呪いを解くためにチーミンと村へ向かうが、数々の驚愕の事実が待ち受けているのだった…。
Netflixで7/8より配信がスタートしてからSNS上では「これまで観た映画で一番怖い」などと恐れ慄く声が多数あがり、Netflixの視聴ランキング「今日の映画TOP10(日本)」で首位を記録している台湾発ホラー映画。
台湾の高雄市で実際に起きた、とある6人家族がそれぞれ違う神に憑かれ、互いに攻撃し合ったり、自傷行為をしたりと不可解な行動を起こし、そのうちの1人が死亡に至った事件を元に着想され、5年の準備期間を経て制作されました。
日本のホラーの代表作である『リング』『呪怨』『仄暗い水の底から』といった作品で描かれてきた、我が子を怨念から守ろうとする母親が呪いの犠牲と成り行く構図など、ジャパニーズホラーの影響を受けた台湾のケビン・コー監督が創り上げたホラーであり、様々な要素が高次元で融合された、これだけ話題になっているのも納得の完成度の高さを誇るホラーとなっています。
信仰心の深さや大きな謎に包まれた宗教の中での禁忌など、そこに宿る、手を出してはいけないという恐怖心が最大限に生かされており、ホラーらしい演出で視聴者を怖がらせることは鉄板だが、あえてその効果的な演出を最小限に削り、ただ恐怖を煽るだけでなく、我々が作品に入り込み少なからず共感せざるを得ない”人間性”、人間の憎悪を恐怖の武器として扱うことが、圧倒的にダメージを与える恐怖であるのだと痛感させられます。
冒頭から主人公による視聴者への語りかけや、好奇心をそそられる錯視を利用した映像、”認識次第で呪いは本物になる”というメッセージなど、開始約1分でただ単に映画を視聴するだけではなく現実にまで影響を与える惹き込まれる構成は素晴らしく、これが後々我々を強く苦しめる呪いの第一歩であることに気づいた時、その秀逸さに大満足しつつも、浮かび上がる人間の醜悪さにただ気分が悪くなりゆく体調を見守りながら、これが本物の体感型ホラーであるのだと気づくのです。
現在公開中である、劇場公開ができるのが不思議なくらい鮮血飛び散りまくり殺戮表現てんこ盛りの『哭悲/The Sadness』やNetflixの『返校 言葉が消えた日』『怪怪怪怪物!』などと近年特に生き生きと活気付いている台湾ホラー映画界の中でも真骨頂と言える『呪詛』。
驚くべきことに既に次のポスタービジュアルが公開され製作は着実に進められており、三部作構想になるということで、我々が『呪詛』で目撃してしまった地獄のような呪いからは解放されることなど決してないのだと、そっと覚悟を決めるのです。
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