こんにちは、テラシマユウカです。
今週は、大人になればなるほどに本棚の奥の方まで仕舞い込まれた記憶のアルバムを引っ張り出し、こじ開けられるような感覚にさせられる作品をご紹介します。
Vol.167『サバカン SABAKAN』
☆4.0/☆5.0点中
1986年の長崎。夫婦喧嘩は多いが愛情深い両親と弟と暮らす久田は、斉藤由貴とキン肉マン消しゴムが大好きな小学5年生。そんな久田は、家が貧しくクラスメートから避けられている竹本と、ひょんなことから“イルカを見るため”にブーメラン島を目指すことに。海で溺れかけ、ヤンキーに絡まれ、散々な目に遭う。この冒険をきっかけに二人の友情が深まる中、別れを予感させる悲しい事件が起こってしまう・・・。
大ヒットドラマ「半沢直樹」の脚本など、テレビや舞台の脚本・演出を手がけてきた、金沢知樹の映画初監督作品であり、無名の子役を主役に抜擢した、”子供が主役”の青春映画。
「僕には、サバの缶詰を見ると思い出す少年がいる」
監督の故郷でもある80年代の長崎を舞台に、大人になって「サバの缶詰」を見るたびに思い出す、イルカを見るために冒険にでた二人の少年のひと夏の記憶。
第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた『ミッドナイトスワン』に続くすべての大人たちの魂を揺さぶる、あの頃の僕たち私たちに背中を押してもらえるあたたかな物語であり、キラキラと輝く濃密な夏に友情を育んだサバ缶の味で、忘れられない思い出と絆を結んだ2人の少年の姿が描かれています。
売れない小説家として冴えない毎日を送っている久田孝明役と劇中のナレーションを草彅剛が務め、その少年時代を演技初挑戦の子役、番家一路が演じました。また、原田琥之佑、尾野真千子、竹原ピストル、貫地谷しほり、岩松了らが出演しています。
「タケちゃん」「久ちゃん」と呼び合う少年たちがイルカを探しに自転車に2人乗りして野山を駆け巡り大冒険しながら笑い合う姿と、美しい自然と笛の音色が、こうやって日が暮れるまで遊び回っていたなあ…という知らない場所に挑戦してみたり、ちょっと無茶をして突っ込んでみたりしたあの頃の記憶を、どこか懐かしさを感じさせる田舎の風景とともに世代じゃなくとも、少しでも大人になってしまった私たちのノスタルジーをくすぐります。
劇中で主人公が過ごした1980年代の日々は今の40代後半の方々にとっては懐かしさがいっぱいの時代で、登場するキン肉マン消しゴムやカセットテープといったちょっとしたアイテムなど、記憶の中に残っているものも多く、より魅力を感じる時代となっているかもしれませんが、子どもも大人も年代問わずにそれぞれきっと違う視点で楽しめる作品であり、兄弟・クラスメイト・親友・家族、それぞれの日常が包み隠さずたっぷりの愛情に満ち溢れた青春ドラマです。
タケちゃん久ちゃんがイルカを探す大冒険から帰りいつまでも「またね」と繰り返す様子に、大人になった今そんなことが言い合える友だちがいるだろうか?とほんのり羨ましさを生み、また、様々なものが普及して便利になり時間の早さまでもが変わってしまった今の時代に1番必要なものは何か、そっと気づかせてくれるやさしい物語でした。
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「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、