テラシマユウカの映画コラム Vol.171『手』

こんにちは、テラシマユウカです。

映画コラムを連載させて頂いている中で、監督と対談させて頂いたりトークショー出演させてもらったりと色んなご縁から、10月28日に漫画家ごめんさんの個展ツアーのトークイベントに出演させていただくことになりました。

https://eplus.jp/sf/word/0000136558

ごめんさん×今泉力哉監督×私、というとっても楽しみな掛け合わせでお話ししますのでお時間ある方は下北沢にふらっとあそびにきてください。

Vol.171『手』

☆4.0/☆5.0

『ちょっと思い出しただけ』の松居大悟監督が描く恋愛のリアル。

ロマンポルノ50周年を記念したプロジェクト「ROMAN PORNO NOW」の第一弾であり、山崎ナオコーラの小説「手」を原作に、年上の男性に惹かれてしまう女性を描きます。

第二弾には白石晃士監督の『愛してる！』（9/30）、第三弾には金子修介監督の『百合の天音』（10/14）がROMAN PORNO NOWのプロジェクトとして公開されます。

主人公のさわ子を『彼女はひとり』の福永朱梨、同僚の森を『サマーフィルムにのって』の金子大地がそれぞれ20代の男女のありのままの姿をリアルに描きだし、他に『模倣犯』の津田寛治、『猫と塩、または砂糖』の田村健太郎などが出演しています。

年上の男性の写真を集めてコレクションしているさわ子。おじさんへの執着は父親にうまく愛情表現できないことへの裏返しであり、妹が生まれるまでは父親に可愛がられていたが、父親の愛情が妹に移ってしまったと感じるようになってからは知らず知らずの内に寂しさが募り、心の奥底で願う父親に愛されたい、振り向いてほしいというさわ子の複雑な感情が作中のあちらこちらで見受けられます。

そして、おじさん好きのさわ子もいつしか同僚の森と深い関係になっていく過程で、彼の存在がきっかけとなり父親と向き合い、少しずつ大人になろうと揺れ動くさわ子の成長が描かれています。

タイトルにある通り”手”で人間関係を描写する演出が多く用いられており、手と手を繋ぐ、そっと手を添える、手で体をまさぐる…
その人の手でしか満たされないものがあり、親への愛も異性への愛も手と手が触れ合うことで最初の一歩が始まるのだと、人と人との繋がりには手が欠かせないもので、人の生き方が手に現れるとよくいうのはあながち間違いではないのだと思えてきます。

「そばにいる人を、めちゃくちゃに愛したいと、ときどき思う。」

10分に1回絡みのシーンを作り、上映時間は70分程度などの制約を守りながら制作された日活ロマンポルノの作品の中で、身体だけでなく心で繋がり、コミュニケーションとして性行為があると、さわ子を介して若者たちの等身大の性や恋愛の姿を映し出した青春映画となっています。

寂しくも日常のちょっとした幸せに気付かせてくれる、ふわふわとした浮遊感を感じながらも確かに日常に存在するリアルも同時に感じる、背伸びのないありのままの人間ドラマでした。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。

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Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
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Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
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Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール－凶暴領域－』
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