こんにちは、テラシマユウカです。
12月を迎え今年もいよいよ終わりが迫ってきていますが、いかがお過ごしでしょうか?
冬の少しチクリと痛むくらいの寒さが好きなので、もう年末なのにまだ気温が下がりきらないもどかしさを感じています。
吐くと白い息や、大きく空気を吸い込むと鼻がツンっとする感覚が恋しいのではやく味わいたいものです。
Vol.181『ザリガニの鳴くところ』
☆4.2/☆5.0
https://www.zarigani-movie.jp/
1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で、裕福な家庭で育ち将来を期待されていた青年の変死体が発見された。容疑をかけられたのは、‟ザリガニが鳴く”と言われる湿地帯でたったひとり育った、無垢な少女カイア。彼女は6歳の時に両親に見捨てられ、学校にも通わず、花、草木、魚、鳥など、湿地の自然から生きる術を学び、ひとりで生き抜いてきた。そんな彼女の世界に迷い込んだ、心優しきひとりの青年。彼との出会いをきっかけに、すべての歯車が狂い始める…。
2019年・2020年の2年連続、アメリカで最も売れた本であり、更に日本でも2021年に本屋大賞・翻訳小説部門第1位に輝き、全世界にて累計1500万部を超える大ヒットを記録した、動物学者ディーリア・オーエンズによるミステリー小説『ザリガニの鳴くところ』。
ノースカロライナ州の湿地帯で発見された、街の有力者の息子の変死体。その犯人であると疑われた、両親に見捨てられながらも湿地で孤独に生き続けてきた少女の半生と、彼女をめぐる裁判の行方を描いた、不思議なタイトルからは想像もつかない、美しくも息の詰まるサスペンス・ミステリー。
原作に惚れこんだハリウッド女優リース・ウィザースプーンが自身の製作会社を通して映画化権を獲得し、自らプロデューサーを担当したり、また、世界的シンガーのテイラー・スウィフトが原作を愛するあまり自ら楽曲を書き下ろすなど、著名人からも愛されていることで話題となっています。
主演には、ゴールデングローブ賞ドラマ部門でノミネートを果たした新星デイジー・エドガー=ジョーンズ。共演には『シャドウ・イン・クラウド』テイラー・ジョン・スミス、『キングスマン ファースト・エージェント』ハリス・ディキンソン、『ノマドランド』デビッド・ストラザーンなど。
“真相は、初恋の中に沈むー”と謳われたポスタービジュアルからはミステリー色が強く捉えられますが、実際にはその要素は薄めとなっています。
冒頭こそ容疑者としてカイアが逮捕されミステリー色を放ちますが、物語自体は回想をメインとしたカイア自身の生い立ちや魅力にフォーカスし、それと同時に彼女の裁判の様子が同時に描かれていくという構成になっており、湿地帯でひとり孤独に生きてきた少女の逞しさと彼女を変わり者だと迫害する人々を描くことで、自然の美しさと人間の卑しさ、そして自然に生きる彼女そのものみつめることになるヒューマンドラマとして展開されていきます。
水に囲まれた雄大な自然の美しさの中で孤独ながらも懸命に生き抜く彼女の生き様と、その中で出会ったふたりの男性とのロマンスによって殺人の疑いをかけられる彼女に感情移入させ、無罪判決が出ることを祈りながら偏見や差別的な視線をむける周囲の人たちと判決の行方を見届ける巧妙なドラマであり、ミステリー要素に主軸を置いていないため謎を含ませたままの結末ながらもラストに至るまでに多く張り巡らせた伏線達は、結末を迎えてからカイアの言葉を思い返して思わず感嘆してしまいます。
「自然界では自らが生き延びるために天敵を殺すが、そこには善悪の意識は存在していない。」
湿地に生きる植物や鳥や虫たちの生態から生きる術を学んだカイアは、生死をも飲み込んで消してしまう生存競争の自然そのものであり、湿地でもありザリガニの鳴くところと呼ばれた自然の美しさに沼に足を踏み入れるように浸って溶け込んでしまいたいと願ってしまうのです。
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テラシマユウカ
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