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こんにちは、テラシマユウカです。

新年、明けましておめでとうございます!

1月1日から我々GANG PARADEは5時間ライヴをさせて頂きまして、最高のスタートを決めることができたのではないでしょうか。

1月からはWACKツアー、4月にワンマンツアー、そして5月にはアルバムリリースともうすでに予定が溢れていて楽しみがてんこ盛りです。

元日ライヴでは5月リリースのアルバムからいくつか新曲を披露しましたが、その中の「さよならメトロポリス」という曲を作詞させて頂きました。とある映画を観て着想を得た曲です。

今年の目標としては本を読む・映画鑑賞記録をつける、という事を日々のベースにしながら知識をつける学びの年にしたいなと思っております。

「今日はさぼって映画をみにいく」
2023年も続いていきますので、
よろしくお願い致します!

Vol.185『ケイコ 目を澄ませて』

☆4.0/☆5.0

https://happinet-phantom.com/keiko-movie/

 

嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。
母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す――。

 

聴覚障害と向き合いながら実際に2013年までに4戦を戦った元プロボクサー・小笠原恵子さんの生き方から着想を得て、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱が新たに生み出した物語。

ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、じっと”目を澄ませて”闘うケイコの姿を秀でた才能を持つ主人公としてではなく、不安や迷い、喜びや情熱などの様々な感情の間で揺れ動きながらも一歩ずつ確実に歩みを進める等身大の一人の女性として描き、彼女の心のざわめきを16mmフィルムに焼き付けました。

生まれつきの聴覚障害と付き合いながらプロボクサーとなった主人公・ケイコには、『愛がなんだ』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞に輝き、映画、ドラマと立て続けに活躍している岸井ゆきの。ケイコの実直さを誰よりも認め見守るジムの会長に日本映画を牽引する三浦友和が演じ、その妻役を仙道敦子が演じています。その他には三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子など実力派キャストが名を連ねました。

何かを書く音、部屋の外を通るパトカーの音、グラスを取る音、氷の音。ジムに行けば、縄跳びの音や、ミットに打ち付ける音、床がきしむ音、さまざまな音が響き渡り、なんとなく世界に溢れている、これらの日常音が聞こえない生活というものを強く意識させられます。

ですが、彼女が聾者であることについてのエピソードが綴られてはいるものの、本作の主題はそこではありません。きっと、この映画のなかで考えさせられることはケイコが聴覚障害を持っているという前提からではなく、ケイコというひとりの女性の常に何かと闘い続けている熱い生き方が主題となって描かれているのです。

ケイコの真っ直ぐな感情や複雑な思いは、音として言葉にはできませんが、その力強い眼差しはまさに、”目を澄ませる”であり、この世界は厳しさで溢れているが、どこかで優しい世界もちゃんと存在していて、東京の美しい街並みに思いを重ねながら、その美しい景色をケイコはどんな葛藤を抱きながらどんな思いで見つめていたのだろうかと、伝えることが容易いことではない世界に生きることをそっと見守る作品です。

彼女が抱える心の雑音から心情、街頭に映る雪や、表情を覆うオレンジ色の夕陽、街を漂う匂いまで、16mmフィルムで撮影された映像の粒子感によってしっかり焼き付き、観る者の心をつかんで離しません。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


「今日はさぼって映画をみにいく」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』
Vol.81『Swallow/スワロウ』
Vol.82『ヒッチャー ニューマスター版』
Vol.83『恋する遊園地』
Vol.84『ズーム/見えない参加者』
Vol.85『ダニエル』
Vol.86『マーメイド・イン・パリ』
Vol.87『プラットフォーム』
Vol.88『聖なる犯罪者』
Vol.89『ベイビーティース』
Vol.90『花束みたいな恋をした』
Vol.91『ビバリウム』
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Vol.97『ザ・スイッチ』
Vol.98『SNS-少女たちの10日間-』
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Vol.110『17歳の瞳に映る世界』
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Vol.114『フリー・ガイ』
Vol.115『サマーフィルムにのって』
Vol.116『アナザーラウンド』
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Vol.118『うみべの女の子』
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Vol.121『キャッシュトラック』
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Vol.126『アンテベラム』
Vol.127『マリグナント 狂暴な悪夢』
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Vol.129『リトル・ガール』
Vol.130『ボクたちはみんな大人になれなかった』
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Vol.132『キングスマン:ファースト・エージェント』
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Vol.134『ドント・ルック・アップ』
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Vol.136『さがす』
Vol.137『偶然と想像』
Vol.138『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』
Vol.139『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
Vol.140『ちょっと思い出しただけ』
Vol.141『アンチャーテッド』
Vol.142『ナイル殺人事件』
Vol.143『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
Vol.144 『林檎とポラロイド』
Vol.145『ナイトメア・アリー』
Vol.146『TITANE/チタン』
Vol.147『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
Vol.148 『ハッチング―孵化―』
Vol.149『モービウス』
Vol.150『カモン カモン』
Vol.151『パリ13区』
Vol.152『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
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Vol.167『サバカン SABAKAN』
Vol.168『NOPE/ノープ』
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Vol.171『手』
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Vol.174『マイ・ブロークン・マリコ』
Vol.175『アフター・ヤン』
Vol176. 『窓辺にて』
Vol.177『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
Vol.178『RRR』
Vol.179『ファイブ・デビルズ』
Vol.180『ザ・メニュー』
Vol.181『ザリガニの鳴くところ』
Vol.182『ラーゲリより愛を込めて』
Vol.183『MEN 同じ顔の男たち』
Vol.184『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、11月16日(水)にはメジャー4thシングル「Priority」のリリースが決定している。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。

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