こんにちは、テラシマユウカです。
冬生まれなので暑さよりも寒い方が好きなのですが、ひさしぶりに冬の北海道に来て張り詰めた本物の冬の冷たさを感じることができて気分が上がっています。
大阪から東京に上京してきた時に、寒さの種類の違いを風によって感じましたが、北海道は空気が綺麗で息を吸い込むと鼻の通りが良くなる様な感覚があります。
ライブ後の、のぼせる様な熱気を持ったまま雪の降り積もる外にでたら初めて”整う”というものを体験してしまいました。サウナには苦手意識がありますがこれを体験できるなら挑戦してみるのも悪くないなと思います。
Vol.188『ノースマン 導かれし復讐者』
☆4.1/☆5.0
9世紀、スカンジナビア地域にある、とある島国。若き王子アムレートは、旅から帰還した父オーヴァンディル王とともに、宮廷の道化ヘイミルの立ち会いのもと、成人の儀式を執り行っていた。
しかし、儀式の直後、叔父のフィヨルニルがオーヴァンディルを殺害し、グートルン王妃を連れ去ってしまう。10歳のアムレートは殺された父の復讐と母の救出を誓い、たった一人、ボートで島を脱出する。
数年後、怒りに燃えるアムレートは、東ヨーロッパ各地で略奪を繰り返す獰猛なヴァイキング戦士の一員となっていた。ある日、スラブ族の預言者と出会い、己の運命と使命を思い出した彼は、フィヨルニルがアイスランドで農場を営んでいることを知る。
奴隷に変装して奴隷船に乗り込んだアムレートは、親しくなった白樺の森のオルガの助けを借り、叔父の農場に潜り込むが…。
父を目の前で殺され、母をさらわれた王子アムレートが辿る数奇な運命と、壮絶なる復讐の旅路。その果てに待ち受ける、想像を絶する結末とは?怒涛のアクションと圧倒的映像美で魅せる、没入感MAXのリベンジ・アクション・エンターテインメント。
『ウィッチ』『ライトハウス』で全世界に衝撃を与えた超個性派の天才映画監督ロバート・エガース最新作は、北欧を舞台に展開する壮大なスケールのファンタジー巨編。
スカンジナビアの神話やアイスランドの英雄物語、ヴァイキング伝説をベースにした復讐譚であり、ロバート・エガース監督は初のアクション大作に挑戦した。このアムレートは、シェイクスピアの悲劇『ハムレット』のもとになったという説もまことしやかに語られています。
主演を務め、ヴァイキング映画を作りたいと企画し製作も兼任するのは『ゴジラvsコング』などで知られるスウェーデン出身のアレクサンダー・スカルスガルド。
共演には、エガース監督の『ウィッチ』からアニャ・テイラー=ジョイ、『ライトハウス』からウィレム・デフォーが再登板し、『スキャンダル』『アクアマン』のニコール・キッドマン、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』のクレス・バング、『ブラック・フォン』のイーサン・ホーク、そして、歌手で『ダンサー・イン・ザ・ダーク』主演も務めたビョークという超豪華なキャスト陣が脇を固めます。
シェイクスピア『ハムレット』、12世紀に書かれた『デンマーク人の事績』という歴史に関する記録に登場する、スカンディナヴィアの伝説上の人物『アムレート』を、監督のロバート・エガースは独自のアレンジで、兄でもある王を殺した男が王の妻をさらい結婚し、やがて大人になった王の息子が復讐を果たしに王国へと帰ってくる、という共通するひとつの神話としてまとめることに挑戦しました。
筋骨隆々の肉体や顔面を切り刻まれた傷跡、斬首された転がる遺体の山々、ウィレム・デフォーの干からびた首、痛々しい多くのバイオレンス描写など、ここまで禍々しいヴァイキング作品は初めてだと言い切れるほどの見応え。
序盤の王の継承の儀式からして意味不明なくらいに混沌としており、明暗を際立たせるモノクロ調の映像や、霊的存在を感じさせる象徴的なシーンの繰り返し、奴隷の姿、ビョーク演じるお告げを捧げる預言者など、視覚的インパクトが強くふんだんに取り込まれており、Dolby Cinemaで観たいほどに深く美しい色彩が際立ち、監督の変態的とも言える作家性が全編通して貫かれています。
また音使いも印象的な作品であり、序盤の成人の儀式や、ヴァイキングの戦士たちが戦い前に焚き火を囲んで死を恐れず鼓舞するように唸り声に近い雄叫びをあげ、力強い太鼓のリズムが鳴り響く内臓が揺れるほどの音楽は観てるこちら側まで精神的に追い込まれる。
これまでの監督作品は閉塞的な空間で次第に狂気が高まっていく物語だったのに対して、今回は美しく広大なアイスランドの景色に魅せられながら血と暴力も共存するという、過去作との違いは大きくあるが、リアリティに作り込まれた伝統や風習の異文化と地続きでダークファンタジーが描かれる、我々が今見ているものが現実なのか幻なのかわからなくなる現象はロバート・エガース監督作に共通する特徴でもあります。
そして何よりも凄まじいのは、ワンカット・ワンカメラで撮影されたアクションシーン。
戦士だけでなく子どもや動物まで含まれた相当な数の人々が泥だらけで入り乱れながら、ある者は逃げ惑う女子供を殺そうと追いかけまわしたり、ある者は斧を振りかざし頭をかち割ったり、ヴァイキングたちの獰猛な戦闘シーンは非常に情報量が多くカオスでありながらも、緻密に計算された上で全編カメラ一台で撮影している為、切迫感を強く感じさせながらも非常に観やすく仕上がっており、強烈に印象的な場面として脳にこびりつく。
残酷なシーンが多い作品だが、むやみやたらにそういった描写がある訳ではなくインパクトに残したいシーンごとにポイントで飛び込んでくるので、この作品を特別なものに昇華させています。
ロバート・エガースの手腕に脱帽させられる、時代を超越した気高くも生々しい英雄の姿を幻想的に魅せてくれる、まさに新境地の作品です。
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