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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

スティーヴン・スピルバーグの自伝的映画である『フェイブルマンズ』を観てきました。

2023年を迎えて未だ前半もいいところですが、早々に余裕のぶっちぎりで、今年ナンバーワンになるだろうと確信できる映画を見つけてしまいました。

鑑賞後から時間が経つほどに映画の素晴らしさを実感し、余韻で心臓が震えています。

何よりも素晴らしいのは、スティーヴン・スピルバーグ監督が自身の人生ついて描いた作品で、映画の素晴らしさを語っていない点にあります。

Vol.195『フェイブルマンズ』

☆4.8/☆5.0

https://fabelmans-film.jp/

 

初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年は、8ミリカメラを手に家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作する。
そんなサミーを芸術家の母は応援するが、科学者の父は不真面目な趣味だと考えていた。
そんな中、一家は西部へと引っ越し、そこでの様々な出来事がサミーの未来を変えていく——。

 

本年度アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞ほか計7部門ノミネート。スティーヴン・スピルバーグ監督最新作『フェイブルマンズ』。

50年にわたるキャリアの中で、『ジョーズ』から『E.T.』『ジュラシック・パーク』まで、史上最も愛され続け変幻自在な数々の作品を世界に送り出してきた、現在の映画界最高の名匠であるスティーヴン・スピルバーグが、”映画監督”になるという夢を叶えた自身の原体験を描いた自伝的映画です。

サミー役には新鋭ガブリエル・ラベルを抜擢し、母親は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『マリリン 7日間の恋』などアカデミー賞に4度ノミネートされた経歴を持つミシェル・ウィリアムズ、父親は『THE BATMAN -ザ・バットマン-』のポール・ダノが演じます。
脚本はスピルバーグと、彼と幾度もタッグを組んで来たトニー・クシュナーが共同で担当し、 音楽にジョン・ウィリアムズ、撮影にはヤヌス・カミンスキーといったスピルバーグ作品常連のスタッフ陣が集結しました。

スピルバーグ映画は、映画に心を奪われ恋焦がれるきっかけとなった経験や価値観の形成、映画に夢をみるという原体験を甦らせてくれる。長年にわたってスピルバーグが温めてきた企画である本作は、映画に人生を捧げたスピルバーグの原点に迫った物語であり、そんなスピルバーグが撮ったスピルバーグ自身の映画が面白くない訳なんてありません。

『バビロン』『エンパイア・オブ・ライト』など映画に関する作品の公開が続く中、映画についての映画は映画讃歌になりがち。ですが映画をただ素晴らしいものと描かずに、成功者としての自分の体験を語るでもなく、カメラは事実を鮮明に映し出し映画を作ることによって伴う犠牲を残酷なまでに浮かび上がらせ、いくら切り離して逃げ出そうとしても追いかけてくる呪縛のようなものとしてブレずに描き続けています。

そのため本作は我々の予想と反して、映画作りに焦点を当てたわけでなく、科学者と芸術家の父母の間に生まれ、映画の魅力に虜になった少年サミー・フェイブルマンが、映画作りという芸術への欲求と家族との関係性の狭間で悩みながらも成長していく姿を描いたヒューマンドラマです。”映画”以上に彼の”家族”への愛情が詰まった、つまりタイトルのまま『フェイブルマンズ』の物語なのです。

スピルバーグの集大成とも呼べる作風に仕上がっており、物語は非常にシンプル。サミーの生い立ちと共に成長していく姿を追いかけながら映画監督になるきっかけを見つめるもので、記憶を切り貼りした部分的な回想シーンの連続ではなく、あくまで時間軸は直線的に進んでいきます。そのシンプルな構成の中だからこそ、カメラワーク、構図、演技、演出に至る全てどこを切り取っても洗練されていることがより一層際立つ。また、サミーの感情と共にそれぞれ同時代の映画作品がリンクし、彼と芸術がどれだけ密接な関係にあるかを自然に、そして実に巧妙に描き、オーソドックスな自伝的作品と一線を画したものへと昇華させています。

「すべての出来事には意味がある。」
母ミッツィーがサミーに語りかけたこの言葉は映画づくりにおける最大の要因であり、家族の崩壊はとても悲しいことだが、その一方で、その出来事こそがスピルバーグの映画監督としての輝きをもたらす影の部分となったのです。

このラストシーンを観終えエンドロールに入った瞬間、スティーヴン・スピルバーグ監督の手腕に脱帽し、心が震えるとはまさにこういうことであると、映画の魔力を、そして原体験を思い出すのです。

映画は、夢のように素晴らしい。
もっと素晴らしいのは、
夢みたいに忘れたりはしないことだ。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
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Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
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Vol.18『クロール-凶暴領域-』
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Vol.21『マチネの終わりに』
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Vol.23『テッド・バンディ』
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