こんにちは、テラシマユウカです。
絶賛全国ツアーをまわっている最中なのですが、密かにずっと叶えたかった地方のミニシアターで映画を観るという大人の遠征の楽しみ方をついに実現してしまいました。
フォーラム仙台というミニシアターに行ったのですが、いつもの東京で映画を観るより、シアターの空気もそこにいる人達の雰囲気も全てに違いがあって、とっても素晴らしい時間を過ごすことができました。
遠征でその土地の美味しい名物を食べにいくのも定番で好きですが、映画館をまわるのもまた少し大人になった楽しみ方として、新しい趣味になりそうです。
Vol.199『ザ・ホエール』
☆4.3/☆5.0
恋人アランを亡くしたショックから、現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。
歩行器なしでは移動もままならないチャーリーは頑なに入院を拒み、アランの妹で唯一の親友でもある看護師リズに頼っている。
そんなある日、病状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを悟ったチャーリーは、離婚して以来長らく音信不通だった17歳の娘エリーとの関係を修復しようと決意する。
ところが家にやってきたエリーは、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え、心が荒みきっていた……。
自宅のソファからほとんど動かず、引きこもり生活を送り続けた結果、重度の肥満症となったチャーリー。余命わずかな体重272キロの孤独な男の、最期の5日間をワンシチュエーションの室内劇で描く、壮絶にした心震わすヒューマンドラマ。
自らの死期を悟り、疎遠だった娘との絆を取り戻そうとしながら、さらに、長年押し込めてきたトラウマと向き合うことを決意する。心をえぐる喪失と絶望、複雑で多くの重荷を抱え断絶せざるをえなかった彼が、心の奥底で信じ続けた願いとは…?
『マザー!』以来5年ぶりとなる鬼才ダーレン・アロノフスキー監督の最新作は2012年に初上演された舞台劇の映画化で、A24が製作・配給を手がけ、『ハムナプトラ』シリーズなどでハリウッドのトップスターに昇りつめながらも、心身のバランスを崩して表舞台から遠ざかっていたブレンダン・フレイザーが奇跡のカムバックを果たしました。
その他に『ストレンジャー・シングス』シリーズのセイディー・シンク、本作でアカデミー賞助演女優賞初ノミネートを見事果たしたホン・チャウ、サマンサ・モートンら豪華俳優陣が脇を固めます。
喪失感と罪悪感によって精神的に閉じこもってしまった人間が、人生の最期に殻を破って抜け出し、内面的な葛藤にひたすら寄り添いながらも生きることについての根源的な問いを観るもの全てに投げかけます。
緊迫感溢れるストーリー展開は未だかつてないほどに激しく心を揺さぶる物語であり、死を常に意識しながら最期の時を過ごす精神的に追い詰められた人間の心の軌跡の描き方は、まるで自分も彼の部屋に閉じこもっているかのような息づかいを感じるほど。
40日もの撮影期間、毎日メイクに4時間以上を費やし45キロのファットスーツを着用した、アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した程のインパクト絶大のブレンダン・フレイザーの姿と彼の渾身の演技はまさに圧巻であり、圧倒的な異彩を放ちます。
人の心がどうしようもないくらい深く傷ついてしまった時に、どうしてそこから這い上がるのか。8年もの間、溝を深く生み出してきた娘との関係を修復できるのか。一筋縄には克服することのできない苦悩を静かに強く向き合った映画であり、観客の持つ心の傷を抉りながらも、正直に生きることの大切さと、人間がみな抱く感情について突き詰めた先にある深淵的なテーマに辿り着いてしまった時、我々はしばらく席から立ち上がれなくなってしまうのです。
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テラシマユウカ
「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、11月16日(水)にはメジャー4thシングル「Priority」のリリースが決定している。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。