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こんにちは、テラシマユウカです。

ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか?

大型連休が終わると日常の鬱屈した気持ちを抱えがちになってしまいます。学生の頃は五月病が特に重いタイプでしたが、通っていた学校が学園祭があってからすぐにGWに突入タイプだったのでより五月病まっしぐらのハードモードだったなあと思い返します。

気候の変化もありつつ、毎日同じ繰り返しに飽き飽きとして嫌になっちゃうので、自分で工夫して何か新しい楽しみを見つけられていたら一味違う日々を過ごせるのかもしれません。

Vol.203『それでも私は生きていく』

☆3.9/☆5.0

https://unpfilm.com/soredemo/

 

サンドラは、夫を亡くした後、通訳の仕事に就きながら8歳の娘リンを育てるシングルマザー。仕事の合間を縫って、病を患う年老いた父ゲオルグの見舞いも欠かさない。しかし、かつて教師だった父の記憶は無情にも徐々に失われ、自分のことさえも分からなくなっていく。彼女と家族は、父の世話に日々奮闘するが、愛する父の変わりゆく姿を目の当たりにし、サンドラは無力感を覚えていくのだった。
そんな中、旧友のクレマンと偶然再会。知的で優しいクレマンと過ごすうち、二人は恋に落ちていくが……。

 

第66回ベルリン国際映画祭で監督賞を受賞し、今やフランス映画界を代表する存在となったミア・ハンセン=ラブ監督の最新作。

主人公のサンドラを演じているのは映画『007 スペクター』(2015)、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)と2作連続でボンドガールに選ばれたレア・セドゥ。

病気の父親と過ごした自身の経験をもとに次第に記憶を失っていく父を見つめる悲しみと新しい恋がもたらす喜び、正反対の状況に直面する一人の女性の心情を繊細に描き、両極な感情に感情を大きく振りながら、真摯に生きていく、人生讃歌とも言える上質なヒューマンドラマです。

主にサンドラと父、サンドラとクレマンという2つの大きい関係で物語を構成していきます。父が次第に人らしさを失っていく中で自分を認識できなくなることへの不安を抱き、父を思う娘にどのような悲しみや苦しみが漂うが、そしてそれと同時にクレマンへの愛の情熱も彼が家庭を持っていることを知りながら現実逃避のように突き進んでいく。

仕事と介護、そして子育てでお洒落に時間を割く余裕はなく、ショートの髪、すっぴん、デニムにリュックといった格好でも一段と目を引く妖艶さがありながら、あくまで日常に存在する”普通”の人を演じるのは、レア・セドゥだからこそできた表現。35ミリフィルムで撮影した温かみのある色彩で捉えられた映像をより深く味わい深いものへと導いています。

悲しみと再生という正反対の二つの感情がどのように同時に存在し影響し合うのかを表現した物語は、丁寧に人間の弱いところも強いところも描いていてよくある日常を思わせ、ありのままであって結論を出さずに観客へ余白を残すことで我々が人生そのものについて考えるきっかけともなるのです。

英題は『One Fine Morning』、”ある晴れた朝”。『それでも私は生きていく』という邦題が実に秀逸で、作品を観ながら何度もこの言葉を反芻し、のめり込んでいきます。

看病に仕事に子育て、抱えきれぬほどのものを背負った女性が、恋を求める姿を斜めから捉えるのではなく真っ直ぐありのままに映し出し、ある程度年齢を経てから今一度この作品に出会いたいと願う、静かなる説得力がある作品でした。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
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Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
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Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
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Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
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Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
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Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
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Vol.78『ザ・プロム』
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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、11月16日(水)にはメジャー4thシングル「Priority」のリリースが決定している。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。

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