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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

雨の降る日がじわじわと増えていく季節ですが、この先にまた梅雨入りがあると思うとなんだか鬱々とした気分になってしまいます。

雨の音と匂いは好きですが、それって部屋で横になりながらその感覚に浸る時間が好きなだけであって外に出てしまったらお仕舞いな気がしてしまいます。

コンビニに駆け込んで急遽傘を買い足してしまうというイベントを、なんとか減らしていきたいものです。

Vol.204『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』

☆4.1/☆5.0

universalpictures.jp/micro/armageddon-time

 

1980 年代、ニューヨーク。
ユダヤ系アメリカ⼈の中流家庭の末っ⼦ポールは、公⽴学校に通う12歳。PTA会⻑を務める教育熱⼼な⺟エスター、働き者でユーモラスな⽗アーヴィング、私⽴学校に通う優秀な兄テッドと何不⾃由のない⽣活を送っていた。
しかしポールは、クラス⼀の問題児である⿊⼈⽣徒ジョニーと親しくなったことで、複雑な社会情勢が突きつける本当の逆境を知ることになる。
あるとき、ポールとジョニーが学校でやらかした些細な悪さが、彼らの平穏な⻘春の⽇々に⼤きな波乱をもたらす。その解決しがたい問題に直⾯したとき、ポールは家族、特に強い絆で結ばれている祖⽗アーロンに頼ることができたが、家庭環境に恵まれないジョニーには⽀えてくれる⼤⼈が誰⼀⼈としていなかった。
そして、このことが2⼈の⾏く末を⼤きく分けることになる――。

 

『エヴァの告白』『アド・アストラ』など社会派からSFまで精力的に新作を世に送り出し続けるジェームズ・グレイが、製作・監督・脚本を務めた最新作。

ジェームズ・グレイの幼少期を投影した自伝的作品であり、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された本作は、『レイチェルの結婚』『レ・ミゼラブル』のアン・ハサウェイ、『羊たちの沈黙』『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスなどアカデミー賞をはじめとする賞レース常連の名優たちに加え、『ジェントルメン』『シカゴ7裁判』で強い印象の残すジェレミー・ストロングら一流キャストの共演にも注目です。

レーガン政権が誕生し、冷戦の緊張がさらに高まる80年代ニューヨークを舞台に、多感かつ繊細な12歳の少年ポールが培っていく友情、そして微妙な変化を迎える家族との関係を通して、時代を取り巻く理不尽や不公平を浮き彫りにしていく。

生きづらさの中に滲む理解と愛に寄り添い、同時に、自分の無力さを噛みしめ、世の中に折り合いをつけながら日々を営む人々の姿を痛烈かつエモーショナルに映し出します。

監督の幼少期を描いたものであり、そしてユダヤ系ということで、最近まで上映されていたスティーブン・スピルバーグ監督の自伝的映画『フェイブルマンズ』とどこか被るものがあります。

10歳くらいの幼い子供の話ですが、全編通して陰鬱さと緊張感が漂い、ポールを取り巻く大人たちがどこか不安定に描かれています。差別が強かった80年代のアメリカを過ごした少年時代、黒人の友達との友情を中心に、青春時代に政治というものが侵食してくる幼少期の嫌な記憶やトラウマを告白する様な物語です。

ユダヤ系の家庭ゆえ、祖父が語るように迫害から逃れてきた過去がありますが、ポール自身はユダヤ人差別というものを認識・実感したことがなく、転校初日に迂闊に本来のファミリーネームを話してしまったりと、世間知らずで無垢な様子が伺えます。

ある事件から、世の中は不公平の上に成り立っていること、その不公平の中で自分の生き方を見極めていかなければならないと父親に伝えられます。ユダヤ系ということが露呈すればいつ差別的な扱いをされるかわからない立場でありながら、白人という逆の立場でもあるポールは、物語が進んでいくにつれて、よくある親子の確執や思春期の心の問題ではなく、ユダヤ人であること、黒人であることに対する突き刺すような視線に気づき、やがて理解し始めてしまいます。

ラストの、ポールが通う私立学校のPTAの男のスピーチを聞きながらその場を離れ、外に出るポールから、誰もいない道、廊下、ポールの部屋を映しじっくりと引いて終わっていく物語のカメラワークが抜群に素晴らしく、社会の不条理に気付いて飲み込んだ先の現実への失望に、ひとりの少年時代が終末を迎える痛みを知ってしまうのです。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
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Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
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Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
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Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
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Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
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Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
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Vol.81『Swallow/スワロウ』
Vol.82『ヒッチャー ニューマスター版』
Vol.83『恋する遊園地』
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Vol.86『マーメイド・イン・パリ』
Vol.87『プラットフォーム』
Vol.88『聖なる犯罪者』
Vol.89『ベイビーティース』
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テラシマユウカ

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