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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

外を歩いているだけでジリジリと肌を焦がし、汗が滲みでてくる夏の嫌な感覚がいよいよやってきてしまいました。

夏への覚悟を決めて過ごしているこの頃ですが、実はまだ梅雨明けはしていないそうです。

帰宅してから冷房をつけて部屋が冷えるまで待っている時間が何よりも苦痛で、あの時間が存在するせいで帰ってきてやろうと思っていたことの気力が全て失われてしまう気がします。

上手に乗り越えていきたい季節、それでも夏らしいことはちょっぴりとしてみたいという矛盾と戦っていきましょう。

Vol.212『Pearl パール』

☆3.9/☆5.0

https://happinet-phantom.com/pearl/

 

1918年、テキサス。
スクリーンの中で踊る華やかなスターに憧れるパールは、敬虔で厳しい母親と病気の父親と人里離れた農場に暮らす。若くして結婚した夫は戦争へ出征中、父親の世話と家畜たちの餌やりという繰り返しの日々に鬱屈としながら、農場の家畜たちを相手にミュージカルショーの真似事を行うのが、パールの束の間の幸せだった。
ある日、父親の薬を買いに町へ出かけ、母に内緒で映画を見たパールは、そこで映写技師に出会ったことから、いっそう外の世界への憧れが募っていく。そんな中、町で、地方を巡回するショーのオーディションがあることを聞きつけたパールは、オーディションへの参加を強く望むが、母親に「お前は一生農場から出られない」といさめられる。
生まれてからずっと“籠の中”で育てられ、抑圧されてきたパールの狂気は暴発し、体を動かせない病気の父が見る前で、母親に火をつけるのだが……。

 

話題の映画スタジオA24製作の最新作『Pearl パール』。本作は『X エックス』の続編にして前日譚。前作ではポルノ映画を撮影する若者たちの姿を見て若かりし頃の自分を思い出し欲情した老婆が、彼らを目の敵にし殺戮を繰り返すという物語でした。今作はその重要なキャラクターであるシリアルキラーの老婆が、なぜそんなことをしてしまう様になったのか?、若かりし頃のパールに迫る物語が描かれています。

監督・脚本は前作に続いてタイ・ウエストが担当。『X エックス』で主人公のマキシーンと、最高齢のシリアルキラー・パールの二役を演じたミア・ゴスが主演として、本作でも若かりし頃のパールを演じ、脚本とエグゼクティブ・プロデューサーとしても参加しています。

ミア・ゴスの怪演によってマーティン・スコセッシ監督が魅せられ、ベネチア国際映画祭が狂喜し、ホラー映画初のオスカー候補と噂されたほど悪魔的な魅力で世界中を熱狂させたシリアルキラー”パール”。

スクリーンの中で踊るスターを夢見る少女がいかにして無慈悲で凶暴なシリアルキラーへと変貌してしまったのか。パールの狂気に圧倒されながらも、最後には彼女の笑顔の虜になってしまいます。

オープニングでは『オズの魔法使い』などハリウッドのミュージカル黄金時代を思わせるような、田舎で華やかな世界を想いながら憂鬱に暮らしている夢みがちな若い女の子がこれからサクセスストーリーを始めていくと期待させる描写からガチョウを串刺しにして一気に狂気をチラつかせて空気を一変しタイトルが浮かび上がる演出はとても清々しい物語の幕開け。

『X エックス』は若者が田舎にやってきて惨劇にあう、70年代のスラッシャー映画を想起させるような設定でジャンルの王道を行きながら風刺を効かせたものでしたが、今作は前作とはまた趣向を変えた、往年のハリウッド映画をオマージュしたような演出やテクニカラー調の色彩の映像で描かれており、プロット自体は素直ながらもサイコホラーとのミスマッチが働き、観客により困惑を感じさせます。

主演のミア・ゴスの存在は素晴らしく、前作『X エックス』でも実は一人二役という荒業で圧倒的な怪演を披露してくれましたが、今回もヒステリックでサイコで淫靡な狂気っぷりをほぼワンテイクで演じており、前作にも増してミア・ゴス劇場となっていました。

「病気だと思う?」と自分が異常者ではないかという思いを抱え普通であろうと意識している側面や、自分を特別だと思って夢に向かって自信満々に現実逃避していたパールが自分を認め自己の矛盾と向かい合わせになっていく姿はとても哀れで苦しく、現代的でもあり、シリアルキラーなのに共感できてしまう部分もあって、本来の自分を受け止めるアイデンティティの確立の物語なのかもしれません。

抑圧された環境下で生きてきた彼女の苦しみに同情しながら、彼女の中に渦巻く狂気はどこで芽生えたのかもっと見てみたかった気持ちもあり、夫であるハワードがなぜパールを受け入れ『X エックス』につながっていったのか気になるところで、完結編として現在製作中の『MaXXXine』とあわせA24初の三部作となるシリーズで最後に何が描かれるのか、これもまた楽しみで仕方ありません。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。2022年5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、2023年5月10日(水)にはメジャー2ndアルバム「OUR PARADE」をリリース。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。

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