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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

先日『イノセンツ』試写会に登壇させて頂き、映画評論家の方とお話しする機会がありました。

映画監督の方々とは対談企画などでお会いする機会があったのですが、評論家の方とは意外にも初めてでそれぞれの視点からの解釈をトークできる時間はとっても貴重であっという間の時間でした。

さて、本題の今週のコラムですが、嬉しいことに監督直々にお声がけして頂き7月21日より単独公開が決定した作品を紹介させていただきます。

Vol.213『PARALLEL』

☆4.1/☆5.0

http://parallelmov.html.xdomain.jp/

 

幼少期に両親から虐待を受けていた舞はその過去の記憶と折り合いをつけられず、親友の佳奈とただ時間を忘れて遊ぶ日々を過ごしていた。ある日、舞はアニメキャラクターのコスプレ姿で殺人を繰り返す殺人鬼に遭遇する。不思議と舞に興味を惹かれたコスプレ殺人鬼は自分の正体を隠し、舞に近づいていくのだった。

舞は心の傷を殺人鬼は自分の本当の姿を隠しながらも二人は次第に仲を深め、見えない“何か”によって強く惹かれあっていく。
しかし、お互いが隠している本当の姿を知ることは、別れを意味していた。

 

前作のヒーロー映画『FILAMENT』が大学の卒業制作でありながら、国内外数々の映画祭で注目を集めた新悦・田中大貴監督の長編初監督作品。“傷を抱えた少女”と“アニメの世界に行きたい殺人鬼”の恋愛模様を描く異色のスプラッター×ラブストーリーをなんと驚くことに監督自らが脚本・撮影・照明・編集・特殊造形・VFX・プロデューサーまでを1人で務め、圧倒的なエネルギーを持って完成させた一作です。

幼少期に両親から虐待を受けていた舞にはモデル・女優として活躍し、本作が長編映画初主演となる楢葉ももな。アニメキャラクターのコスプレ姿で殺人を繰り返す殺人鬼にはCM「CHILL OUT」に出演する芳村宗治郎の二人を抜擢。

長編初作品ながら『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021』では堂々のグランプリを受賞。スイス映画祭へ海外出品された際の上映では連日満席となるなど海外でも話題となり、また渋谷での1日限定の上映会ではチケット販売開始当日に全席完売し、急遽追加上映が行われました。

そんな話題作がついに2023年初夏、7月21日〜7月27日の期間、テアトル新宿にて単独公開されることが決定しました!

また劇中に登場するオリジナルアニメ『人造魔法少女カイニ』が、新たに短編アニメとして映画本編終了後に上映されることも決定。

それぞれ目に見える傷と見えない傷、変身願望を抱えながら生きるふたりの男女の出会いから別れまでを描いた儚く悲劇的なラブストーリーであり、コスプレやアニメなどのサブカルチャーとスプラッターそして純愛物語という、相反するジャンルを掛け合わせながらもそれぞれが絶妙なバランスで存在し、かつ日本らしさを貫き通した作品となっています。

コミュニケーションが希薄になった現代社会の闇の中でもがき苦しんだ果てに新たな生きる意味を見つけ、お互いが心を通わせ気持ちを分かち合う瞬間のきらめきを味わう純度の高い恋模様はなんとも格別。彼らが過去の傷を確かめ合いながら上書きする様にまた傷をつけ合っていくふたりだけの美しく歪んだかけがえのない時間を紡ぐ物語は新鮮な愛情表現となり、それぞれの視点から丁寧に描く赤と青の色彩を基調とした映像に秘められた想いと共に押し寄せるあらゆる記憶と感情が観る者を圧倒します。

スプラッターなだけあって鮮やかな血飛沫やバラバラにされ、芸術作品の様に洗濯機に盛り付けられた死体はグロテスクで『ハウス・ジャック・ビルト』の様な一癖ある独創的な要素も持ちながらも古典的な味わい深い一面も持つ、振り切ったスプラッター映画としても充分に濃度の高い作品です。暴力表現が実に秀逸に作用しており、ネオンライトに彩られた美しい映像とふたりのどこか哀しげながら愛を確かめ合う様な表情、そして共に過ごす穏やかな時間が狂気との対比となって中和し混ざり合い、彼らの心の闇そして我々もどこかで抱えている痛みや苦しみを分かち合える、予想外の心情の動きを体感することになります。

現実世界での自分とは何なのか、この世界で生きる理由とはどこに存在しているのか?

自問自答し、大切な誰かと共有し、『PARALLEL』に込められた想いをじわっとこの先にも感じながら生き続けていくのです。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
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Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
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Vol.87『プラットフォーム』
Vol.88『聖なる犯罪者』
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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。2022年5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、2023年5月10日(水)にはメジャー2ndアルバム「OUR PARADE」をリリース。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。

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