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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

すっかり街を行き交う人々も秋の装いとなり、日が沈み始めた時間帯に心地よい空気をたっぷりに吸い込むのがたのしい季節となりました。

ツアーのためしばらく西の方へいましたが、久しぶりに東京に帰ってくると想像以上に肌寒く、たった数日の変化に驚いてしまいました。

急な気温の変化に翻弄されず風邪に気をつけて過ごしていきたいものです。

Vol.225『アンダーカレント』

☆4.5/☆5.0

https://undercurrent-movie.com/

 

2005年に発行されるや「まるで1本の映画のようだ!」と、フランスを中心に国内外から熱狂的な支持を得た豊田徹也の伝説の漫画が待望の実写映画化。『愛がなんだ』『ちひろさん』などを手がけた稀代の映画監督・今泉力哉のもと、主人公・かなえには日本アカデミー賞女優の真木よう子、かなえの銭湯に訪れる謎の男・堀役に井浦新、探偵・山崎役にリリー・フランキー、かなえの失踪した夫・悟役に永山瑛太らら錚々たる豪華キャストが集う。音楽はカンヌ国際映画祭最高賞受賞作『万引き家族』の細野晴臣が担当した。

映画化の報せは日本を駆け抜け、SNSでは早くも大きな話題を呼び、世界中から注目を集める本作は、心の奥底に閉じ込めた気持ちを大切に描きだした143分。コミュニケーションが不足する、こんな今の時代だからこそ届けたい想いが、ここにある。

誰しも、人には言えない大切な〈嘘〉を秘めている。穏やかな日常に漂う〈心の奥底〉に触れたとき、差し込む一筋の光とは…。

 

かなえの夫・悟は何故、失踪してしたのか?
堀と名乗る謎の男は何故、突如現れ銭湯で働くようになったのか?

このように大きく2つの疑問と共に、
「人をわかるってどういうことですか?」
人の心という身近でありながら最も難解でもある、人間の分からなさという誰しもが抱いた感情である普遍的なテーマを、アンダーカレント〈心の奥底に流れる底流〉をモチーフに描き出していきます。

登場人物の表向きの心理とアンダーカレントな心理の2面を巧妙に使い分け、それぞれの関係性や接点、細やかな深層心理がこちらに想像力を委ねるかたちで表現されます。水へ沈んでいく真木よう子の姿は、ハッと息をのむほど美しく、我々観客もまるで水面に顔を映すかのようにし自分の姿を重ねてしまいます。

人が人を理解するとは、どういうことだろうか?共に過ごす時間の中で芽生えた感情は相手が居なくなったときどうなっていくのだろうか?他者と触れ合うことで、ついつい相手を分かったような気持ちになってしまいますが、人というものはそう単純なものでもない。そんな風に、誰しもが抱えて生きている不器用な一面を『アンダーカレント』は描き、観る者の心を静かに激しく動かします。

俳優陣の繊細な表現、言葉にはできない感情を耳に残す細野晴臣の音楽、そして今泉力哉監督の紡ぎ出す余白を残した優しく愛のある時間にこれまでのあらゆる映画体験とも重ならない不思議とたゆたうような感覚に溺れ魅了されるのです。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


「今日はさぼって映画をみにいく」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』
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Vol.83『恋する遊園地』
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Vol.120『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』
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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。2022年5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、2023年5月10日(水)にはメジャー2ndアルバム「OUR PARADE」をリリース。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。

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