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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

これまで数多くの映画に触れてきた人生ではありますが、この頃、また新たな角度の映画体験を経験する贅沢な時間を過ごしています。

ひとつは、自らで監督・脚本・編集まで製作の全てを務めた短編映画を撮ったこと。

ショートフィルムをつくる機会を頂き、『甘い記憶』と題しまして、過去に作詞した「さよならメトロポリス」という曲を映画に落とし込み10分の作品を完成させました。

二日間のイベントだけの限定上映だったのですが、とっても貴重な経験を積むことができ、映画制作の大変さと尊さを身をもって知ることができました。

またどこかで上映できる日が来ること、そして別の新しい作品を作れる機会が来ることを願っています。次書きたい脚本のイメージがふと寝る前に浮かんだのでメモにこっそり書き留めておきます。

そして、もうひとつは遠いけれど身近な存在でもあった事務所の先輩の主演映画を観たこと。

映画とは、自分とは違う世界の話で、夢を覗くかの様に観てきたカルチャーのひとつに、以前から知っている人が出て、それを映画館で観るという体験はなんとも言葉にするのは難しい貴重な時間でした。

今週はそんな映画をご紹介します。

Vol.227『キリエのうた』

☆4.5/☆5.0

https://kyrie-movie.com/

 

路上ミュージシャンのキリエは、歌でしか声を出すことができない。ある夜、過去と名前を捨てたイッコは、キリエの歌を聴きマネージャーを買って出る。彼女らは石巻、大阪、帯広、東京で歌を紡ぎながら、過去にとらわれた青年や、人の傷に寄り添う女性に出会う。

『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』。時代を震わせてきた監督・岩井俊二×音楽・小林武史による新作映画が、遂に誕生。
ふたりの心を射止めたのは、伝説的グループBiSHを経て、現在はソロとして活動するアイナ・ジ・エンド。歌うことでしか“声”が出せない路上ミュージシャン・キリエ役で映画初主演を果たし、本作のために6曲を制作。スクリーン越しに圧巻の歌声を響かせる。

アイナと共に“運命の4人”を演じたのは、次代を担う面々。姿を消したフィアンセを捜し続ける青年・夏彦役に、松村北斗。過去にとらわれた青年の複雑な心情表現を細やかな演技で魅せる。傷ついた人々に寄り添う教師・フミ役は、黒木華。清らかな慈愛を体現し、物語に奥行きを与える。過去を捨て、名前を捨て、キリエのマネージャーを買って出る謎めいた女性・イッコ役には、広瀬すず。今回は従来のイメージを覆す役どころに挑み、新境地を拓いた。

石巻、大阪、帯広、東京――。岩井監督のゆかりある地を舞台に紡がれる、出逢いと別れを繰り返す4人の壮大な旅路。儚い命と彷徨う心、そこに寄り添う音楽。 “あなた”がここにいるから――。13年に及ぶ魂の救済を見つめたこの物語は、スクリーンを越えて“貴方”の心と共振し、かけがえのない質量を遺す。

 

映画『キリエのうた』は、2011年に起きた東日本大震災を発端に紡がれた物語であり、「キリエ」(本名ルカ)について、彼女の現在・幼少期・高校時代の3つの時代を切り貼りしながらパズルの様な構成で、主要な登場人物の13年間の人生が展開していきます。

震災により幼くして家族を亡くしてしまい、また、大好きな姉を亡くしたショックから、歌を歌う時以外満足に声が出せない体になってしまったキリエ。その後、キリエはイッコとの出会い・再会から自身の生活やアーティスト活動を支えてくれる数々の仲間たちと出会い、シンガーソングライターとして着実に成長していきます。キリエ・イッコ・夏彦の3人それぞれの群像劇でもあり、そしてただ単に震災映画と呼んでしまうには多層的であり、震災という大きな出来事が直接は関係のなかった誰かにまで繋がるものとして確かに存在していること、人生について、ある程度は運によって左右されてしまうものであると痛感してしまう物語なのです。

そしてそんな数奇な運命を抱え生きるキリエは刹那的な美しさと儚くも確かな強さを持ち、自らの魂を削る様に歌う姿と楽器を鳴らすみたいに響く歌声は、我々観客の身体の内側から何かが湧き出るように心を震わせ、未体験の歌詞に歌声に打たれる感覚を目撃することになります。

そんな風に、嵐の過ぎ去る道のりかの様に壮絶な物語でありながら心地の良さが纏う余韻が残る不思議さは、少なからず運命論はあれど人生は悲しみだけではなく、音楽によって生み出される高揚やあたたかさ、幸福感が確かにこの手にあるのだと、そのじんわりとした感触を大切に抱きしめていたいと願うのです。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
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Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
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Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
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Vol.18『クロール-凶暴領域-』
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Vol.21『マチネの終わりに』
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Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
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Vol.32『ジョジョ・ラビット』
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「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。2022年5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、2023年5月10日(水)にはメジャー2ndアルバム「OUR PARADE」をリリース。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。

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