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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

仕事柄SNSから離れることがない生活を過ごしていますが、デジタルデトックスというものを一度は経験してみたいなという気持ちが芽生えています。

学生時代、周囲の人間に比べて圧倒的にSNSへの興味関心が薄い性格だったのですが、今ではすっかりそんなこともなくなってしまったので、離れたらどんな気持ちになるのだろう?と興味があります。

スマホを見ずに知らない土地をただ歩いてみたり、何の時間を調べずに映画館にふら〜っとはいってその時にやってる作品を観たり、1週間とは言わないので、最低でも48時間程度はどこかのタイミングをみつけて挑戦してみたいです。

Vol.228『シック・オブ・マイセルフ』

☆3.9/☆5.0

https://klockworx-v.com/sickofmyself/

 

シグネの人生は行き詰まっていた。長年、競争関係にあった恋人のトーマスがアーティストとして脚光を浴びると、激しい嫉妬心と焦燥感に駆られた。自身が注目される「自分らしさ」を手に入れるため、ある違法薬物に手を出す。薬の副作用で入院することとなり、恋人からの関心を勝ち取ったシグネだったが、その欲望はますますエスカレートしていき――。

 

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で絶賛されると、その後欧米を中心に世界の映画祭を席巻。脚本・監督を務めたクリストファー・ボルグリは、早くも次回作『DREAM SCENARIO』がA24製作×『ミッドサマー』のアリ・アスターによるプロデュースで話題を呼ぶ今後注目の新鋭。

目を背けたくなるほどの破滅的な自己愛と承認欲求を描いた異色の“セルフラブ”ストーリーの怪作が誕生。少なからず誰もが持つ承認欲求を切り口に、何者にもなれない主人公が嘘や誇張を重ね、人に注目されるための「自分らしさ」を追い求めるあまりに自身を見失っていく様を、シニカルにそして極端なまでにコミカルに映し出します。

主人公シグネの病的なまでの自己顕示欲はどこまで膨れ上がっていくのか?そして嫌悪を感じるほどに剥き出しで暴走する自己愛が彼女を誘う先にあるのは、幸福か、あるいは…。現代に巣食う羨望、嫉妬や欲望の「その先」を描く寓話的ホラー。

北欧映画には、美しい風景や自然の彩りがどのシーンを切り取っても絵になるような特有のイメージがあります。しかし、その中に潜む異常なほどの陰湿さも同時に兼ね備えてることが多く、本作と同じ製作陣である映画『わたしは最悪。』を更に猛毒で煮詰めたような作品となっています。

「承認欲求」をテーマに、薬物に手を出してまで世間から注目浴び何者かになりたかったひとりの女性の、人間の欲求の末路を描いた物語。それは、誰もがこうなりたくはないと感情を抱くが、多かれ少なかれ人間が皆抱くものであり、共感とまではいかなくともいつこういう人間が現れてもおかしくないと身に沁みるものがある。歪んだ欲求が感覚を狂わせていく様は想像以上にシニカルでエッジが効いており、人間が自滅していく様を哀れに後味悪い。しかし、北欧の美しさはそのままにポップでお洒落に描かれる映像はそのギャップの演出によって比較的観やすくなっていました。

乖離した理想と現実に取り残された自我と過度な自己愛が引き起こす悲惨な結末は、現代社会でのSNSでの在り方や人間関係が深く投影された衝撃作でした。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


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Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』
Vol.81『Swallow/スワロウ』
Vol.82『ヒッチャー ニューマスター版』
Vol.83『恋する遊園地』
Vol.84『ズーム/見えない参加者』
Vol.85『ダニエル』
Vol.86『マーメイド・イン・パリ』
Vol.87『プラットフォーム』
Vol.88『聖なる犯罪者』
Vol.89『ベイビーティース』
Vol.90『花束みたいな恋をした』
Vol.91『ビバリウム』
Vol.92『ガンズ・アキンボ』
Vol.93『トムとジェリー』
Vol.94『BLUE/ブルー』
Vol.95『パーム・スプリングス』
Vol.96『街の上で』
Vol.97『ザ・スイッチ』
Vol.98『SNS-少女たちの10日間-』
Vol.99『ノマドランド』
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Vol.101『くれなずめ』
Vol.102『クルエラ』
Vol.103『猿楽町で会いましょう』
Vol.104『コンティニュー』
Vol.105『RUN/ラン』
Vol.106『ライトハウス』
Vol.107『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
Vol.108『1秒先の彼女』
Vol.109『ブラック・ウィドウ』
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Vol.111『プロミシング・ヤング・ウーマン』
Vol.112『日常対話』
Vol.113『ザ・スーサイド・スクワッド』
Vol.114『フリー・ガイ』
Vol.115『サマーフィルムにのって』
Vol.116『アナザーラウンド』
Vol.117『ドント・ブリーズ2』
Vol.118『うみべの女の子』
Vol.119『レミニセンス』
Vol.120『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』
Vol.121『キャッシュトラック』
Vol.122『DUNE/デューン 砂の惑星』
Vol.123『キャンディマン』
Vol.124『最後の決闘裁判』
Vol.125『ラストナイト・イン・ソーホー』
Vol.126『アンテベラム』
Vol.127『マリグナント 狂暴な悪夢』
Vol.128『スパゲッティコード・ラブ』
Vol.129『リトル・ガール』
Vol.130『ボクたちはみんな大人になれなかった』
Vol.131『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
Vol.132『キングスマン:ファースト・エージェント』
Vol.133『マトリックス レザレクションズ』
Vol.134『ドント・ルック・アップ』
Vol.135『ハウス・オブ・グッチ』
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Vol.137『偶然と想像』
Vol.138『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』
Vol.139『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
Vol.140『ちょっと思い出しただけ』
Vol.141『アンチャーテッド』
Vol.142『ナイル殺人事件』
Vol.143『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
Vol.144 『林檎とポラロイド』
Vol.145『ナイトメア・アリー』
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Vol.147『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
Vol.148 『ハッチング―孵化―』
Vol.149『モービウス』
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Vol.152『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
Vol.153『流浪の月』
Vol.154『死刑にいたる病』
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Vol.156『トップガン マーヴェリック』
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Vol.158『PLAN75』
Vol.159『ブラック・フォン』
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Vol.168『NOPE/ノープ』
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Vol.172『秘密の森の、その向こう』
Vol.173『ホラー・ショートフィルム特集』
Vol.174『マイ・ブロークン・マリコ』
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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。2022年5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、2023年5月10日(水)にはメジャー2ndアルバム「OUR PARADE」をリリース。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。

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