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StoryWriter

こんにちは、テラシマユウカです。

これから梅雨入りすることを忘れてしまうくらいの、日本各地を飛び回り晴れの日を引き続けているこの頃。

「ライブ」という言葉は季語にするならば夏に属されるのかもしれせん。ライブが増えると夏が近づいてくる匂いがして、カレンダーでスケジュールを確認する瞬間が多くなるような気がします。

Vol.261『蛇の道』

☆3.9/☆5.0

https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=hebinomichi

 

何者かによって 8 歳の愛娘を殺された父、アルベール・バシュレ。偶然出会った精神科医の新島小夜子の協力を得て、犯人を突き止め復讐することを生きがいに、殺意を燃やす。
“誰に、なぜ、娘は殺されたのか”。
とある財団の関係者たちを 2 人で拉致していく中で、次第に明らかになっていく真相。
“必ずこの手で犯人に報いを—”
その先に待っているのは、人の道か、蛇の道か。

 

『岸辺の旅』で第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門・監督賞を受賞、『スパイの妻』で第77回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞するなど、世界から高い評価を得る巨匠・黒沢清監督。

本作は1998年に手がけた同名映画『蛇の道』をフランスに舞台を移してセルフリメイクしたリベンジサスペンス。娘を殺された父親と彼に手を貸す精神科医が繰り広げる徹底した復讐の行方を、全編フランスロケ&フランス語で描き出す。

他人の復讐に協力する謎めいた精神科医という難しい役どころを柴咲コウがフランス語で熱演し、2019年のフランス映画『レ・ミゼラブル』で注目を集めたダミアン・ボナールが復讐に燃える男アルベールを演じました。

始まりからラストシーンまで、柴咲コウの視線がスクリーンを支配する。全てを飲み込む彼女の情のない美しく冷たい眼光は鋭く、何を考えているか分からないから怖いのではなく、全ての行動に秘められた意図がありそうで怖い。フランスを舞台にしての黒沢清タッチの撮影とも相まって静けさと不気味さが相乗効果で印象に残る。無表情と対峙する表情と視線の映画であり、まさに蛇に睨まれた蛙のような気分で、異様な存在感を放つ主人公に仕上がっています。

復讐に燃えるが弱腰なアルベールと、協力者だが淡々と事を進める小夜子。常に次の行動をリードする強い意志を歩き方からも感じさせ、終始違和感を漂わせる物語と終盤に一気に全貌が明かされる展開にゾッと恐怖を覚える。

悲劇的な復讐劇として純粋なサスペンス映画であり、ドロドロしたものはなく切れ味の鋭い潔さが存在する。スクリーンに終始漂う退廃的な雰囲気と、なんでもないような日常描写を不気味に撮る手腕は流石であり、映画としてのリアリティが洗練されています。

復讐を成し遂げる事や、その是非を問うような理屈で語るのではなく、復讐に取り憑かれてしまった者の葛藤と模索を描き、恐ろしいはずなのに人物や物語に感情的にのめり込むことなく、映画作品としての美しさを保ち続けながら鑑賞を終える。

悪魔のような色気を持つ柴咲コウの美しい瞳が、鑑賞後もじっとこちらを見つめ続けているのです。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。


「今日はさぼって映画をみにいく」のバックナンバーも合わせてチェック!!

Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』
Vol.81『Swallow/スワロウ』
Vol.82『ヒッチャー ニューマスター版』
Vol.83『恋する遊園地』
Vol.84『ズーム/見えない参加者』
Vol.85『ダニエル』
Vol.86『マーメイド・イン・パリ』
Vol.87『プラットフォーム』
Vol.88『聖なる犯罪者』
Vol.89『ベイビーティース』
Vol.90『花束みたいな恋をした』
Vol.91『ビバリウム』
Vol.92『ガンズ・アキンボ』
Vol.93『トムとジェリー』
Vol.94『BLUE/ブルー』
Vol.95『パーム・スプリングス』
Vol.96『街の上で』
Vol.97『ザ・スイッチ』
Vol.98『SNS-少女たちの10日間-』
Vol.99『ノマドランド』
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Vol.101『くれなずめ』
Vol.102『クルエラ』
Vol.103『猿楽町で会いましょう』
Vol.104『コンティニュー』
Vol.105『RUN/ラン』
Vol.106『ライトハウス』
Vol.107『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
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Vol.110『17歳の瞳に映る世界』
Vol.111『プロミシング・ヤング・ウーマン』
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Vol.114『フリー・ガイ』
Vol.115『サマーフィルムにのって』
Vol.116『アナザーラウンド』
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Vol.119『レミニセンス』
Vol.120『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』
Vol.121『キャッシュトラック』
Vol.122『DUNE/デューン 砂の惑星』
Vol.123『キャンディマン』
Vol.124『最後の決闘裁判』
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Vol.127『マリグナント 狂暴な悪夢』
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Vol.141『アンチャーテッド』
Vol.142『ナイル殺人事件』
Vol.143『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
Vol.144 『林檎とポラロイド』
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テラシマユウカ

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤママチミキ、ユメノユア、キャン・GP・マイカ、ココ・パーティン・ココ、ユイ・ガ・ドクソン、月ノウサギ、キラ・メイ、チャンベイビー、キャ・ノン、ナルハワールド、アイナスター、カ能セイの13人からなるアイドルグループ、GANG PARADEのメンバー。2022年5月21日『GANG PARADE THE GREATEST SHOW TOUR 』YOKOHAMA BAY HALL公演より新13人体制としての活動がスタートし、2023年5月10日(水)にはメジャー2ndアルバム「OUR PARADE」をリリース。多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在であり、映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「今日はさぼって映画をみにいく」を現在連載中。

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