こんにちは、テラシマユウカです。
8月も下旬へ駆け抜けてしまいそうなこの頃。
きっとまだ暑い日は続くはずですが、夏の終わりについて考える時間が迫ってきているような気がします。
そんなノスタルジックな予感を抱えながら、暑くも美しい記憶を夏の終わりに思い出して、心がじんわりするような新曲が出来上がったので是非聴いてみてください。
Vol.269『夏の終わりに願うこと』
☆3.7/☆5.0
https://www.bitters.co.jp/natsuno_owari/index.html
ある夏の1日。
7歳の少女・ソルは、母に連れられて父・トナの誕生日パーティーのため祖父の家を訪ねる。
病気で療養中の父と久しぶりに会えることを無邪気に喜ぶソルだったが、準備に駆け回る家族の異変に気が付いていく。
よろこびや戸惑い、希望や不安…。それぞれが抱える思いが交差するなか、パーティーが始まろうとしていた。
儚くきらめくメキシコの太陽に照らされながら、7歳の少女が“別れ”を知るまでの誰もが大切な記憶を思い出す、宝物のようなかけがえのない1日を描く感動作。
病気で療養中の父と再会を果たしたとき、それまで抱えていた思いがあふれ出し、ソルは新たな感情を知ることになる。よろこび、悲しみ、希望、落胆。波打つ自身の感情の変化に戸惑いながらも、物語のラストに少女が願ったこととは?
1日を通して揺れ動く少女の心を瑞々しく描ききったのは、新鋭リラ・アビレス。MIU MIUの短編アンソロジーシリーズ「Women’s Tales」で一篇を手掛け、国際的に活躍する若手女性監督として注目を集める。「メキシコ映画の新たなパイオニア(IndieWire) 」と評され、今作は長編2作目ながらベルリン国際映画祭エキュメニカル審査員賞を受賞、アカデミー賞®国際長編映画賞のショートリストにも選出された。
映画初出演にして主演を務めたナイマ・センティエスほか、個性豊かな登場人物たちのアンサンブルが唯一無二の輝きを放ちます。
病気で最後の時が近い父親の誕生日会を開く、ごく普通のメキシコ人家族の1日を淡々と静かに追っていく。登場人物や何でもないような彼らの会話は自分がまるでそこにいるかのような気持ちにさせ、とある家族のホームビデオを観ていると間違うほどに皆が自然体。本物の家族にしか見えない素晴らしい演技を過不足なく捉え、リアリティの中に幻想的な空気も共存する丁寧な映像が映し出されます。
劇的な展開はなく、ほぼワンシチュエーションのホームドラマの中に喜びと悲しみ、生と死、全てを知る大人と純粋無垢な子どもといった対比を浮かばせる。何気ない生の営みの中で人生の終わりは誰にでも訪れるものであり、そしてそれぞれの辛さに直面するのだと、微笑ましくも切なさもある複雑な感情を味わうこととなります。
少女・ソルの心の揺れはラストに近づくにつれてどんどん切なく、また、ある種の覚悟も見えます。容赦なく淡々と死にゆく人とその近しい人々を描写した作風には驚きもありますが、大切なものが消えようとしている世界で避けられない終わりに寄り添って向き合う家族の姿に生と死を考える機会を与えられるのです。
ラストカットには静かにしびれ、余韻をひきずる作品です。
※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。
「今日はさぼって映画をみにいく」のバックナンバーも合わせてチェック!!
Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』
Vol.81『Swallow/スワロウ』
Vol.82『ヒッチャー ニューマスター版』
Vol.83『恋する遊園地』
Vol.84『ズーム/見えない参加者』
Vol.85『ダニエル』
Vol.86『マーメイド・イン・パリ』
Vol.87『プラットフォーム』
Vol.88『聖なる犯罪者』
Vol.89『ベイビーティース』
Vol.90『花束みたいな恋をした』
Vol.91『ビバリウム』
Vol.92『ガンズ・アキンボ』
Vol.93『トムとジェリー』
Vol.94『BLUE/ブルー』
Vol.95『パーム・スプリングス』
Vol.96『街の上で』
Vol.97『ザ・スイッチ』
Vol.98『SNS-少女たちの10日間-』
Vol.99『ノマドランド』
Vol.100『ファーザー』
Vol.101『くれなずめ』
Vol.102『クルエラ』
Vol.103『猿楽町で会いましょう』
Vol.104『コンティニュー』
Vol.105『RUN/ラン』
Vol.106『ライトハウス』
Vol.107『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
Vol.108『1秒先の彼女』
Vol.109『ブラック・ウィドウ』
Vol.110『17歳の瞳に映る世界』
Vol.111『プロミシング・ヤング・ウーマン』
Vol.112『日常対話』
Vol.113『ザ・スーサイド・スクワッド』
Vol.114『フリー・ガイ』
Vol.115『サマーフィルムにのって』
Vol.116『アナザーラウンド』
Vol.117『ドント・ブリーズ2』
Vol.118『うみべの女の子』
Vol.119『レミニセンス』
Vol.120『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』
Vol.121『キャッシュトラック』
Vol.122『DUNE/デューン 砂の惑星』
Vol.123『キャンディマン』
Vol.124『最後の決闘裁判』
Vol.125『ラストナイト・イン・ソーホー』
Vol.126『アンテベラム』
Vol.127『マリグナント 狂暴な悪夢』
Vol.128『スパゲッティコード・ラブ』
Vol.129『リトル・ガール』
Vol.130『ボクたちはみんな大人になれなかった』
Vol.131『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
Vol.132『キングスマン:ファースト・エージェント』
Vol.133『マトリックス レザレクションズ』
Vol.134『ドント・ルック・アップ』
Vol.135『ハウス・オブ・グッチ』
Vol.136『さがす』
Vol.137『偶然と想像』
Vol.138『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』
Vol.139『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
Vol.140『ちょっと思い出しただけ』
Vol.141『アンチャーテッド』
Vol.142『ナイル殺人事件』
Vol.143『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
Vol.144 『林檎とポラロイド』
Vol.145『ナイトメア・アリー』
Vol.146『TITANE/チタン』
Vol.147『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
Vol.148 『ハッチング―孵化―』
Vol.149『モービウス』
Vol.150『カモン カモン』
Vol.151『パリ13区』
Vol.152『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
Vol.153『流浪の月』
Vol.154『死刑にいたる病』
Vol.155『犬王』
Vol.156『トップガン マーヴェリック』
Vol.157『FLEE フリー』
Vol.158『PLAN75』
Vol.159『ブラック・フォン』
Vol.160『ベイビー・ブローカー』
Vol.161『X エックス』
Vol.162『呪詛』
Vol.163『ソー:ラブ&サンダー』
Vol.164『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
Vol.165『グレイマン』
Vol.166『女神の継承』
Vol.167『サバカン SABAKAN』
Vol.168『NOPE/ノープ』
Vol.169『ブレット・トレイン』
Vol.170『LAMB/ラム』
Vol.171『手』
Vol.172『秘密の森の、その向こう』
Vol.173『ホラー・ショートフィルム特集』
Vol.174『マイ・ブロークン・マリコ』
Vol.175『アフター・ヤン』
Vol176. 『窓辺にて』
Vol.177『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
Vol.178『RRR』
Vol.179『ファイブ・デビルズ』
Vol.180『ザ・メニュー』
Vol.181『ザリガニの鳴くところ』
Vol.182『ラーゲリより愛を込めて』
Vol.183『MEN 同じ顔の男たち』
Vol.184『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
Vol.185『ケイコ 目を澄ませて』
Vol.186『ファミリア』
Vol.187『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
Vol.188『ノースマン 導かれし復讐者』
Vol.189『ピンク・クラウド』
Vol.190『すべてうまくいきますように』
Vol.191『バイオレント・ナイト』
Vol.192『バビロン』
Vol.193『ボーンズ アンド オール』
Vol.194『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
Vol.195『フェイブルマンズ』
Vol.196『The Son/息子』
Vol.197『オットーという男』
Vol.198『エスター ファースト・キル』
Vol.199『ザ・ホエール』
Vol.200『生きる LIVING』
Vol.201『search/#サーチ2』
Vol.202『AIR/エア』
Vol.203『それでも私は生きていく』
Vol.204『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』
Vol.205『最後まで行く』
Vol.206『aftersun/アフターサン』
Vol.207『テリファー 終わらない惨劇』
Vol.208『M3GAN/ミーガン』
Vol.209『ザ・フラッシュ』
Vol.210『怪物』
Vol.211『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
Vol.212『Pearl パール』
Vol.213『PARALLEL』
Vol.214『ヴァチカンのエクソシスト』
Vol.215『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
Vol.216『イノセンツ』
Vol.217『リボルバー・リリー』
Vol.218『シャーク・ド・フランス』
Vol.219『MEG ザ・モンスターズ2』
Vol.220『アステロイド・シティ』
Vol.221『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』
Vol.222『ファルコン・レイク』
Vol.223『オオカミの家』
Vol.224『コカイン・ベア』
Vol.225『アンダーカレント』
Vol.226『死霊館のシスター 呪いの秘密』
Vol.227『キリエのうた』
Vol.228『シック・オブ・マイセルフ』
Vol.229『理想郷』
Vol.230『私がやりました』
Vol.231『正欲』
Vol.232『シチリア・サマー』
Vol.233『エクソシスト 信じる者』
Vol.234『ナポレオン』
Vol.235『VORTEX ヴォルテックス』
Vol.236『PERFECT DAYS』
Vol.237『レザボア・ドッグス デジタルリマスター版』
Vol.238『枯れ葉』
Vol.239『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』
Vol.240『哀れなるものたち』
Vol.241『みなに幸あれ』
Vol.242『熱のあとに』
Vol.243『ボーはおそれている』
Vol.244『瞳をとじて』
Vol.245『落下の解剖学』
Vol.246『梟―フクロウ―』
Vol.247『ARGYLLE/アーガイル』
Vol.248『デューン 砂の惑星 PART2』
Vol.249『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』
Vol.250『オッペンハイマー』
Vol.251『パスト ライブス/再会』
Vol.252『プリシラ』
Vol.253『フォロウィング 25周年/HDレストア版』
Vol.254『オーメン ザ・ファースト』
Vol.255『インフィニティ・プール』
Vol.256『胸騒ぎ』
Vol.257『ミッシング』
Vol.258『ありふれた教室』
Vol.259『関心領域』
Vol.260『あんのこと』
Vol.261『蛇の道』
Vol.262『フィリップ』
Vol.263『クワイエット・プレイス:DAY 1』
Vol.264『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
Vol.265『クレオの夏休み』
Vol.266『墓泥棒と失われた女神』
Vol.267『ロイヤルホテル』
Vol.268『#スージー・サーチ』
「それでも映画は、素晴らしい。」のバックナンバーも合わせてチェック!!
【連載】Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.2『ライフ・アクアティック』(推薦者:渡辺淳之介)
【連載】Vol.3『そこのみにて光輝く』(推薦者:ココ・パーティン・ココ)
【連載】Vol.4『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(推薦者:沖悠央/SCRAMBLES )
【連載】Vol.5『ライフ・イズ・ビューティフル』(推薦者:GANG PARADE マネ 辻山)
【連載】Vol.6『ヘアスプレー』(推薦者:花柄ランタン ぷき)
【連載】Vol.7『はじまりへの旅』(推薦者:ランタン 村上真平)
【連載】Vol.8『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(推薦者:松隈ケンタ)
【連載】Vol.9『シカゴ』(推薦者:ユイ・ガ・ドクソン)
【連載】Vol.10『トイ・ストーリー3』(推薦者:T-Palette Records 古木智志)
【連載】Vol.11『青春の殺人者』(推薦者:岩淵弘樹)
【連載】Vol.12『時計じかけのオレンジ』(推薦者:BiS ムロパナコ)
【連載】Vol.13『トレインスポッティング』(推薦者:蒲鉾本舗高政高政社長)
【連載】Vol.14『ドリーマーズ』(推薦者:美容室code+LIM ワタロー)
【連載】Vol.15『トゥルー・ロマンス』(推薦者:UGICHIN)
【連載】Vol.16『メリー・ポピンズ』(推薦者:ヤママチミキ)
【連載】Vol.17『ハイスクール・ミュージカル』(推薦者:アヤ・エイトプリンス)
【連載】Vol.18『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(推薦者:平賀哲雄)
【連載】Vol.19『天使にラブ・ソングを…』(推薦者:テラシマユウカの母)
【連載】Vol.20『少年は残酷な弓を射る』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.21『ローマの休日』(推薦者:エビナコウヘイ)
【連載】Vol.22『湯を沸かすほどの熱い愛』(推薦者:セントチヒロ・チッチ)
【連載】Vol.23『あの日々の話』
【連載】Vol.24『万引き家族』(推薦者:ハルナ・バッ・チーン)
【連載】Vol.25『クレイマー、クレイマー』(推薦者:テラシマユウカの父)
【連載】Vol.26『プラダを着た悪魔』(推薦者:LEBECCA boutique ブランドディレクター、赤澤える)
【連載】Vol.27『ザ・マジックアワー』(推薦者:ごんちょく)
【連載】Vol.28『下妻物語』(推薦者:キャン・GP・マイカ)
【連載】Vol.29『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(推薦者:ナルハワールド)
Vol.30『ホラー映画オススメ10選』
vol.31『きみに読む物語』(推薦者:ももち)
テラシマユウカ
「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤ