テラシマユウカの映画コラム Vol.237『レザボア・ドッグス デジタルリマスター版』

新年明けましておめでとうございます。
テラシマユウカです。

2024年初の映画コラムは迷いなくこれ。

私が生まれる前に公開された作品であり、劇場で観れる機会はもう一生ないのかもしれないと、ずっと心の中に引っかかっていたオールタイムベスト10の映画が遂に、30年の時を経てスクリーンに帰ってくる。

この日をどれだけ心待ちにしていたことか。

光栄なことにコメントも寄稿させていただき、2024年の映画ライフ幸先のいいスタートに、これからどんな新しい感動に出会えるのか胸の高鳴りを感じています。

「今日はさぼって映画をみにいく」、
今年も宜しくお願い致します！

Vol.237『レザボア・ドッグス デジタルリマスター版』

☆4.6/☆5.0

1992年、サンダンス映画祭で上映された1本の低予算映画が熱狂を巻き起こした、当時28歳の若手監督クエンティン・タランティーノの初長編作『レザボア・ドッグス』。

登場人物は黒スーツに身をつつんだ6人の男たち。計画は完璧なはずだったが、現場には何故か大勢の警官が待ち伏せており、激しい銃撃戦となってしまう。命からがら集合場所の倉庫にたどり着いた男たちは、メンバーの中に裏切り者がいると考え、互いへの不信感を募らせていく。一見、強盗というありきたりなジャンルに思えるが、今作はすべてが違っていた。

大手メジャースタジオからは生まれる事のない、映画を愛する者たちによる、映画を愛する者たちに向けた“俺たちの映画”の登場は世界各地で絶賛を集め、さらには本作を観た若者たちが“自分たちの映画”をつくりはじめた。現代の映画はここから始まったのだ。

そんな『レザボア・ドッグス』は日本では1993年公開以降、映画館からは長らく姿を消していましたが、2024年1月に遂に30年ぶりに劇場にカムバック。

とにかくこの映画はオープニングが最高。
映画のロマンがここに全て集約されている。

ファーストシーンは、カフェで朝食をとりながら6人の男たちが交わす他愛もない無駄話。彼らは互いの素性を知らず、それぞれ「色」をコードネームにして呼び合う。とりとめのない会話と、そこから垣間見える暴力性とは裏腹な彼らの人物像に一気に惹きつけられる。その直後に始まるオープニングテーマと銀行強盗へと出発する男たちの姿、そして彼らの後ろ姿とタイトルバックのあまりにも渋すぎるカッコ良さに、今まで感じた事のないほどに脳汁が出まくり、もう開始数分だけでお腹いっぱい満たされる。

そしてテーマソングの終わり、強盗シーンが繰り広げられると思いきや、暗い画面の中から聞こえる男の悲痛な叫び声から、タランティーノの操る時間軸の交差が展開される。特に派手な演出やアクションはなく、終始シンプルな会話劇となるが、時系列を巧みに操ることによって物語の展開をシャッフルしながらもリアルタイムで進んでいる臨場感を出す低予算を逆手にとった斬新な演出は雷を落とすほどの衝撃を与えることとなる。

シンプルでスタイリッシュでバイオレンスが炸裂した『レザボア・ドッグス』。初長編作品ながら既に完成されたタランティーノの色に魅了され、映画史を変えた一本である事に納得するのです。

※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。

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Vol.2『ピアッシング』
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Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
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Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
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Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
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Vol.16『アナベル 死霊博物館』
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Vol.18『クロール－凶暴領域－』
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Vol.68『ミッドナイトスワン』
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