こんにちは、テラシマユウカです。
1月、2月は注目の新作映画が多く、どう有効的に時間を使って映画館を渡り歩くかが重要になってくる日々を過ごしています。
どんな物事でも先にこなすべき重要度より、その瞬間の自分の興味や好奇心を優先してしまう性格なので、そこにうまく折り合いをつけて効率的に1日でどれだけ映画館をはしごできるかチャレンジをオフの日にしてみたいと思います。
Vol.243『ボーはおそれている』
☆4.3/☆5.0
https://happinet-phantom.com/beau/
日常のささいなことでも不安になる怖がりの男、ボーはある日、さっきまで電話で話してた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。これは現実か?それとも妄想、悪夢なのか?次々に奇妙で予想外の出来事が起こる里帰りの道のりは、いつしかボーと世界を徹底的にのみこむ壮大な物語へと変貌していく。
『ヘレディタリー/継承』で映画ファンの注目を集め、『ミッドサマー』が全世界で大ヒットを記録するだけでなく、多くの観客に“消えない傷”を植え付けた天才監督アリ・アスター。気鋭の映画スタジオA24と三度目のタッグを組んで世に放つ最新作がついに2月16日(金)、日本解禁。
主演を務めるのは『ジョーカー』でオスカーに輝いた名優ホアキン・フェニックス。これまで様々な作品で怪演を見せてきた彼が極限の演技と表情を見せる本作は、そのキャリアの到達点になった。
実家にたどり着くのが先か? それともボーの人生が転覆し、永遠に壊れるのが先か? スクリーンで一度体験したらもう元には戻れない、衝撃や恐怖を遥かに凌駕する永遠に忘れられないラストが待つオデッセイ・スリラー。
ヘレディタリー、ミッドサマーでアリ・アスターに植え付けられた恐怖とはまた違う角度の、あまりにも突飛で不条理で奇妙な狂気に満ち溢れた作品。鑑賞後にこの名前の付け難い感情をひとりで持って帰るにはあまりにもどうすればいいか分からなくなる。現実と妄想、真実や嘘や幻覚、アリ・アスターの目から見える世界は一体どんな景色が広がっているんだろうと想像を膨らませるが手は届かない。
絶望感や悲壮感が漂いながらもファンタジーの要素があったり、所々笑えてくるポイントがあったり。コメディといいつつも手放しで笑えるようなジョークでもない、色々な情報に侵食される唯一無二の世界がそこには広がっています。
ホアキン・フェニックス演じる極度の心配性であるボーが帰省の旅で経験する様々な恐怖を描き、母親が家庭と子を支配し、時に愛が圧迫をおこす構図で描かれる。しかし、ボーがひたすらに受け身で振り回されているように見えながら、「無自覚で受け身であることを演じている」という母親の言葉から、この作品がボー自身の主観であることが分かります。
アリ・アスターが2度観ることを推奨している様に、ボーへおかしな行動をしてきた人々に対して彼は本当に何もしていなかったか?と着眼点を変え、1度目にはボーの視点でしか見えなかった物語を客観的な視点に置き換える。それによって奇妙な出来事の数々は、実際にはどういう事が起きていたか、ボーの世の中はこういうものであるという主観的思考に縛られていた状態から解放されるのです。
ホラーとコメディが常に表裏一体である様に、ファンタジーなフェイクっぽい描写が現実であったり、メルヘンな映像にボーの人間味のある心情が描かれていたりと、線引きが曖昧な演出が多く考察しがいのある作品です。
※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。
「今日はさぼって映画をみにいく」のバックナンバーも合わせてチェック!!
Vol.1 『ハウス・ジャック・ビルト』
Vol.2『ピアッシング』
Vol.3『凪待ち』
Vol.4『Diner ダイナー』
Vol.5 『劇場版 Free!-Road to the world-夢』
Vol.6『トイ・ストーリー4』
Vol.7『チャイルド・プレイ』
Vol.8『アンダー・ユア・ベッド』
Vol.9『存在のない子供たち』
Vol.10『永遠に僕のもの』
Vol.11『ゴーストランドの惨劇』
Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
Vol.15『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
Vol.16『アナベル 死霊博物館』
Vol.17『JOKER』
Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
Vol.20『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
Vol.21『マチネの終わりに』
Vol.22『グレタ GRETA』
Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
Vol.27『ラスト・クリスマス』
Vol.28『屍人荘の殺人』
Vol.29『パラサイト 半地下の家族』
Vol.30『シライサン』
Vol.31『ペット・セメタリー』
Vol.32『ジョジョ・ラビット』
Vol.33『his』
Vol.34『犬鳴村』
Vol.35『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
Vol.36『ミッドサマー』
Vol.37『架空OL日記』
Vol.38『スキャンダル』
Vol.39『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
Vol.40『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
Vol.41『デッド・ドント・ダイ』
Vol.42『青色映画ポスター特集』
Vol.43『MyFrenchFilmFestival フランスショートフィルム特集』
Vol.44『邦画特集』
Vol.45『エズラ・ミラー特集』
Vol.46『エディ・レッドメイン特集』
Vol.47『眠れない夜にみたい映画』
Vol.48『トラウマ映画特集』
Vol.49『ゴシック映画特集』
Vol.50『映画と音楽』
Vol.51『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』
Vol.52『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
Vol.53『アングスト/不安』
Vol.54『ANNA/アナ』
Vol.55『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
Vol.56『透明人間』
Vol.57『ダークナイト』
Vol.58『劇場』
Vol.59『海底47m 古代マヤの死の迷宮』
Vol.60『ダンケルク』
Vol.61『ハニーボーイ』
Vol.62『インセプション』
Vol.63『ようこそ映画音響の世界へ』
Vol.64『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
Vol.65『インターステラー』
Vol.66『TENET テネット』
Vol.67『エノーラ・ホームズの事件簿』
Vol.68『ミッドナイトスワン』
Vol.69『悪魔はいつもそこに』
Vol.70『マティアス&マキシム』
Vol.71『シカゴ7裁判』
Vol.72『レベッカ』
Vol.73『ザ・ハント』
Vol.74『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』
Vol.75『エイブのキッチンストーリー』
Vol.76『オン・ザ・ロック』
Vol.77『ザ・コール』
Vol.78『ザ・プロム』
Vol.79『ワンダーウーマン 1984』
Vol.80『ソング・トゥ・ソング』
Vol.81『Swallow/スワロウ』
Vol.82『ヒッチャー ニューマスター版』
Vol.83『恋する遊園地』
Vol.84『ズーム/見えない参加者』
Vol.85『ダニエル』
Vol.86『マーメイド・イン・パリ』
Vol.87『プラットフォーム』
Vol.88『聖なる犯罪者』
Vol.89『ベイビーティース』
Vol.90『花束みたいな恋をした』
Vol.91『ビバリウム』
Vol.92『ガンズ・アキンボ』
Vol.93『トムとジェリー』
Vol.94『BLUE/ブルー』
Vol.95『パーム・スプリングス』
Vol.96『街の上で』
Vol.97『ザ・スイッチ』
Vol.98『SNS-少女たちの10日間-』
Vol.99『ノマドランド』
Vol.100『ファーザー』
Vol.101『くれなずめ』
Vol.102『クルエラ』
Vol.103『猿楽町で会いましょう』
Vol.104『コンティニュー』
Vol.105『RUN/ラン』
Vol.106『ライトハウス』
Vol.107『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
Vol.108『1秒先の彼女』
Vol.109『ブラック・ウィドウ』
Vol.110『17歳の瞳に映る世界』
Vol.111『プロミシング・ヤング・ウーマン』
Vol.112『日常対話』
Vol.113『ザ・スーサイド・スクワッド』
Vol.114『フリー・ガイ』
Vol.115『サマーフィルムにのって』
Vol.116『アナザーラウンド』
Vol.117『ドント・ブリーズ2』
Vol.118『うみべの女の子』
Vol.119『レミニセンス』
Vol.120『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』
Vol.121『キャッシュトラック』
Vol.122『DUNE/デューン 砂の惑星』
Vol.123『キャンディマン』
Vol.124『最後の決闘裁判』
Vol.125『ラストナイト・イン・ソーホー』
Vol.126『アンテベラム』
Vol.127『マリグナント 狂暴な悪夢』
Vol.128『スパゲッティコード・ラブ』
Vol.129『リトル・ガール』
Vol.130『ボクたちはみんな大人になれなかった』
Vol.131『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
Vol.132『キングスマン:ファースト・エージェント』
Vol.133『マトリックス レザレクションズ』
Vol.134『ドント・ルック・アップ』
Vol.135『ハウス・オブ・グッチ』
Vol.136『さがす』
Vol.137『偶然と想像』
Vol.138『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』
Vol.139『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
Vol.140『ちょっと思い出しただけ』
Vol.141『アンチャーテッド』
Vol.142『ナイル殺人事件』
Vol.143『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
Vol.144 『林檎とポラロイド』
Vol.145『ナイトメア・アリー』
Vol.146『TITANE/チタン』
Vol.147『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
Vol.148 『ハッチング―孵化―』
Vol.149『モービウス』
Vol.150『カモン カモン』
Vol.151『パリ13区』
Vol.152『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
Vol.153『流浪の月』
Vol.154『死刑にいたる病』
Vol.155『犬王』
Vol.156『トップガン マーヴェリック』
Vol.157『FLEE フリー』
Vol.158『PLAN75』
Vol.159『ブラック・フォン』
Vol.160『ベイビー・ブローカー』
Vol.161『X エックス』
Vol.162『呪詛』
Vol.163『ソー:ラブ&サンダー』
Vol.164『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
Vol.165『グレイマン』
Vol.166『女神の継承』
Vol.167『サバカン SABAKAN』
Vol.168『NOPE/ノープ』
Vol.169『ブレット・トレイン』
Vol.170『LAMB/ラム』
Vol.171『手』
Vol.172『秘密の森の、その向こう』
Vol.173『ホラー・ショートフィルム特集』
Vol.174『マイ・ブロークン・マリコ』
Vol.175『アフター・ヤン』
Vol176. 『窓辺にて』
Vol.177『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
Vol.178『RRR』
Vol.179『ファイブ・デビルズ』
Vol.180『ザ・メニュー』
Vol.181『ザリガニの鳴くところ』
Vol.182『ラーゲリより愛を込めて』
Vol.183『MEN 同じ顔の男たち』
Vol.184『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
Vol.185『ケイコ 目を澄ませて』
Vol.186『ファミリア』
Vol.187『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
Vol.188『ノースマン 導かれし復讐者』
Vol.189『ピンク・クラウド』
Vol.190『すべてうまくいきますように』
Vol.191『バイオレント・ナイト』
Vol.192『バビロン』
Vol.193『ボーンズ アンド オール』
Vol.194『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
Vol.195『フェイブルマンズ』
Vol.196『The Son/息子』
Vol.197『オットーという男』
Vol.198『エスター ファースト・キル』
Vol.199『ザ・ホエール』
Vol.200『生きる LIVING』
Vol.201『search/#サーチ2』
Vol.202『AIR/エア』
Vol.203『それでも私は生きていく』
Vol.204『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』
Vol.205『最後まで行く』
Vol.206『aftersun/アフターサン』
Vol.207『テリファー 終わらない惨劇』
Vol.208『M3GAN/ミーガン』
Vol.209『ザ・フラッシュ』
Vol.210『怪物』
Vol.211『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
Vol.212『Pearl パール』
Vol.213『PARALLEL』
Vol.214『ヴァチカンのエクソシスト』
Vol.215『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
Vol.216『イノセンツ』
Vol.217『リボルバー・リリー』
Vol.218『シャーク・ド・フランス』
Vol.219『MEG ザ・モンスターズ2』
Vol.220『アステロイド・シティ』
Vol.221『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』
Vol.222『ファルコン・レイク』
Vol.223『オオカミの家』
Vol.224『コカイン・ベア』
Vol.225『アンダーカレント』
Vol.226『死霊館のシスター 呪いの秘密』
Vol.227『キリエのうた』
Vol.228『シック・オブ・マイセルフ』
Vol.229『理想郷』
Vol.230『私がやりました』
Vol.231『正欲』
Vol.232『シチリア・サマー』
Vol.233『エクソシスト 信じる者』
Vol.234『ナポレオン』
Vol.235『VORTEX ヴォルテックス』
Vol.236『PERFECT DAYS』
Vol.237『レザボア・ドッグス デジタルリマスター版』
Vol.238『枯れ葉』
Vol.239『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』
Vol.240『哀れなるものたち』
Vol.241『みなに幸あれ』
Vol.242『熱のあとに』
「それでも映画は、素晴らしい。」のバックナンバーも合わせてチェック!!
【連載】Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.2『ライフ・アクアティック』(推薦者:渡辺淳之介)
【連載】Vol.3『そこのみにて光輝く』(推薦者:ココ・パーティン・ココ)
【連載】Vol.4『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(推薦者:沖悠央/SCRAMBLES )
【連載】Vol.5『ライフ・イズ・ビューティフル』(推薦者:GANG PARADE マネ 辻山)
【連載】Vol.6『ヘアスプレー』(推薦者:花柄ランタン ぷき)
【連載】Vol.7『はじまりへの旅』(推薦者:ランタン 村上真平)
【連載】Vol.8『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(推薦者:松隈ケンタ)
【連載】Vol.9『シカゴ』(推薦者:ユイ・ガ・ドクソン)
【連載】Vol.10『トイ・ストーリー3』(推薦者:T-Palette Records 古木智志)
【連載】Vol.11『青春の殺人者』(推薦者:岩淵弘樹)
【連載】Vol.12『時計じかけのオレンジ』(推薦者:BiS ムロパナコ)
【連載】Vol.13『トレインスポッティング』(推薦者:蒲鉾本舗高政高政社長)
【連載】Vol.14『ドリーマーズ』(推薦者:美容室code+LIM ワタロー)
【連載】Vol.15『トゥルー・ロマンス』(推薦者:UGICHIN)
【連載】Vol.16『メリー・ポピンズ』(推薦者:ヤママチミキ)
【連載】Vol.17『ハイスクール・ミュージカル』(推薦者:アヤ・エイトプリンス)
【連載】Vol.18『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(推薦者:平賀哲雄)
【連載】Vol.19『天使にラブ・ソングを…』(推薦者:テラシマユウカの母)
【連載】Vol.20『少年は残酷な弓を射る』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.21『ローマの休日』(推薦者:エビナコウヘイ)
【連載】Vol.22『湯を沸かすほどの熱い愛』(推薦者:セントチヒロ・チッチ)
【連載】Vol.23『あの日々の話』
【連載】Vol.24『万引き家族』(推薦者:ハルナ・バッ・チーン)
【連載】Vol.25『クレイマー、クレイマー』(推薦者:テラシマユウカの父)
【連載】Vol.26『プラダを着た悪魔』(推薦者:LEBECCA boutique ブランドディレクター、赤澤える)
【連載】Vol.27『ザ・マジックアワー』(推薦者:ごんちょく)
【連載】Vol.28『下妻物語』(推薦者:キャン・GP・マイカ)
【連載】Vol.29『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(推薦者:ナルハワールド)
Vol.30『ホラー映画オススメ10選』
vol.31『きみに読む物語』(推薦者:ももち)
テラシマユウカ
「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤ