こんにちは、テラシマユウカです。
6月を迎え、我々GANG PARADEは待望のAVANTGARDE PARADE TOURがはじまりました。
久しぶりのオールスタンディングでのワンマンライブとなり、コロナ禍で精一杯模索し確立してきた楽しみ方ももちろん好きですが、みんなで歌って踊って肩組んで手を繋いで、同じ音楽と空気を共有していく時間は更に素晴らしい景色で、改めてこの体験と感動を味わえる人生である事に幸せを感じました。
まだツアー初日を終えたばかりですが、あっというまに終わってしまいそうで、じっくりと毎分毎秒を味わいながら過ごしていきたいものです。
https://w.pia.jp/t/gangparade/
Vol.259『関心領域』
☆4.8/☆5.0
https://happinet-phantom.com/thezoneofinterest/
空は青く、誰もが笑顔で、子供たちの楽しげな声が聴こえてくる。
そして、窓から見える壁の向こうでは大きな建物から黒い煙があがっている。
時は 1945 年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその妻ヘドウィグら家族は、収容所の隣で幸せに暮らしていた。
スクリーンに映し出されるのは、どこにでもある穏やかな日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在が、音、建物からあがる煙、家族の交わす何気ない会話や視線、そして気配から着実に伝わってくる。
壁を隔てたふたつの世界にどんな違いがあるのか?平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのか?そして、あなたと彼らとの違いは?
『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のジョナサン・グレイザー監督がイギリスの作家マーティン・エイミスの小説を原案に手がけた作品で、カンヌ国際映画祭ではパルムドールに次ぐグランプリに輝き、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞の5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞しました。
ホロコーストや強制労働によりユダヤ人を中心に多くの人々を死に至らしめた、アウシュビッツ強制収容所の壁一枚隔てた隣で平和な生活を送る一家の日々の暮らしを、登場人物らの関心と無関心を重要な要素として、淡々と観察するかのように描きます。
タイトルの『The Zone of Interest(関心領域)』は第2次世界大戦中、ナチス政権が占領下ポーランドに建設したアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉です。
観客に監視カメラの様に固定した画角で観察する視点を徹底させながら、合間に「ヘンゼルとグレーテル」の寓話的なサーモグラフィー映像や真っ赤な画面、真っ黒な画面を差し込み、第三者の覗き見視点を持たせる事により多様な解釈を生み出し、映像から何を読み取るか我々は能動的に向き合うこととなります。
ホロコーストを題材にした映画として強制収容所内の出来事を一切映像で描写しない画期的映像表現を用いますが、本作は音の表現力を突き詰めた作品でもあります。壁の向こう側に決してカメラが向かないだけで、聞こえてくる銃声や叫び声など、すぐ隣でユダヤ人の虐殺が日々行われていることを示唆し、暴力を映像で表現せずとも音だけでアウシュビッツの惨状を仄めかします。
音はただ映像を補完するだけの存在ではありません。映像のフレームは決まっていますが、ひとつの平和な家庭しか情報を提示していないようにみえて音の空間表現力は映像を超え、監視カメラ的映像が捉えきれない事実を音に語らせているのです。
何の変哲もない穏やかな日常が映し出される中で、聴こえるはずのない違和感のある音が鼓膜を刺激するため、我々の暮らす生活音から遮断された映画館で観るべき作品とも言えます。
また、横長のスクリーンの中で縦長の長方形に見えるカットが多く印象に残り、無機質に固定された視点や淡々としたカメラのスライド移動など、映画『シャイニング』やアウシュビッツの焼却炉の形を彷彿とさせるカットが散りばめられています。犬や美しい花など「命」を感じさせる存在も印象的であり、必要とされている命と奪われる命の対比や様々なモチーフが散りばめられ、日常に落とされた影を見つけてしまう恐怖を感じずにはいられません。
目を覆う訳でも耳を塞ぐ訳でもなく、日常の幸せをただ手に入れて過ごす家族を通して、人間の限りある関心の外の、無意識に五感によって入ってくるが認識しない情報を可視化し、時代が変われど戦争や災害などが存在する現代において、果たしてあの家族は他人事と言えるのか?
『関心領域』は、写し鏡ともいえる映画であるのです。
※「今日はさぼって映画をみにいく」は毎週火曜日更新予定です。
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Vol.12『惡の華』
Vol.13『アス』
Vol.14『人間失格 太宰治と3人の女たち』
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Vol.18『クロール-凶暴領域-』
Vol.19『ボーダー 二つの世界』
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Vol.23『テッド・バンディ』
Vol.24『ドクター・スリープ』
Vol.25『マリッジ・ストーリー』
Vol.26『カツベン!』
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Vol.121『キャッシュトラック』
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テラシマユウカ
「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する、テラシマユウカ、ヤ