こんにちは、テラシマユウカです。
2018年から連載してきた「今日はさぼって映画をみにいく」は今週で最終回となります!
約300回にわたり映画をご紹介してきましたが、毎週コラムを読んでくださる皆さんのおかげで、パンフレットやコメントの寄稿、登壇、映画監督との対談など様々な形で大好きな映画に関わることができました。
GANG PARADEのテラシマユウカとしての映画コラムは終了しますが、これからも色んな形で映画を発信し続けていきたいと思いますので、またどこかで出会えたら嬉しいです。よろしくお願いします。
6年間、ご愛読ありがとうございました!
最終回では私のお気に入りの一本であるヒッチコックの作品をご紹介します。
Vol.284『めまい』
☆5.0/☆5.0
刑事ジョン・ファーガソンは、逃走する犯人を追撃中に屋根から落ちそうになる。そんな自分を助けようとした同僚が誤って転落死してしまったことにショックを受けたジョンは、高いところに立つとめまいに襲われる高所恐怖症になってしまう。そのことが原因で警察を辞めたジョンの前に、ある日、旧友のエルスターが現れる。エルスターは自分の妻マデリンの素行を調査してほしいと依頼。マデリンは曾祖母の亡霊にとり憑かれ、不審な行動を繰り返しているという。ジョンはマデリンの尾行を開始するが、そんな彼の見ている前でマデリンは入水自殺を図り……。
世界の映画史において“サスペンス映画の神様”もしくは“帝王”とも称されるアルフレッド・ヒッチコック監督のフィルモグラフィの中でも傑作と名高いミステリーサスペンス。
原作はフランスの作家ボワロー=ナルスジャック(ピエール・ボワロー&トーマス・ナルスジャック)のミステリー小説。ジョンが見る悪夢やヒロインによる真実の告白など練り上げられた演出が冴える。日本初公開は1958年。2014年、特集企画「スクリーン・ビューティーズ」の第3弾「ヒッチコックとブロンド・ビューティー」にて、デジタルリマスター版が公開。
高度な映画技法によって心理描写を演出し、セリフではなく映像で視覚的に語る。主人公である元刑事の視点から、物語に一緒に入り込み情緒不安定で倒錯した心理に陥っていきます。
『めまい』のタイトルの通り、現実と虚構が曖昧になり映画のジャンルまでも二転三転とめまいを起こしたかのように揺らいでいきます。前半では曾祖母の霊に取り憑かれたマデリンの行動を追うホラー調でありながら、中盤〜後半にかけて切ないラブストーリーからサイコサスペンスへと転調し、現実が崩れ去っていくような大きな仕掛けが仕込まれています。
高所恐怖症の主人公が螺旋状の階段を上から見下ろしカメラが急なズームをすることで観客までめまいを起こしたかのような感覚を生み出す映画史に残る有名なショットは、スピルバーグなどに引用されたカメラワークでもあり最高傑作と呼ばれる理由のひとつです。また、人物の周りをグルグル回る映像や、アニメーションも融合させたサイケデリックな幻想夢のシーンも印象的です。
衣装や小道具に赤と緑の反対色を用いた強烈な色づかい、登場人物の髪形や仕草、レンズのフィルター、そして感情まで表現する音楽など、全てがひとつになってヒッチコック独特の視点となり高度な視覚的心理描写に酩酊し、めまいを起こしてしまいます。
キム・ノヴァクが1人でマデリンとジュディの二役を演じ分けますが、主人公のファーガソンもジョンとスコティの2つの名前で呼ばれており、被害者である彼の存在も怪しい立ち位置であることを表します。精神病院のシーンを境に後半の展開がファーガソンの妄想で傷心の彼が作り出してしまった虚構かもしれないと揺らいでいきます。真相は闇の中のまま潔く、そして気味悪く終わってしまう気持ちよさは強烈な衝撃を与えます。
映画表現の古典となった映画の魔術師アルフレッド・ヒッチコックの発想力に幾度となく試され、歴史的な価値を創造した手腕に脱帽してしまうのです。
「今日はさぼって映画をみにいく」をご愛読いただき、ありがとうございました!
テラシマユウカの今後の活躍にご期待ください!
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